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プレゼンの授業案を書いてみた

プレゼンの授業をやったりを書いたりしてると、学びのヒントになるようなものを普段から無意識に探すようになってしまう。あ、これアクティビティの題材に使えるかも、とか。で、とある居酒屋さんのメニューを見て、ちょっと授業のデザイン案を考えてみたので書いてみる。

題材について

題材は、居酒屋の宴会コース紹介のメニュー。価格の異なる3つのコースと、そのコースにセットで付けられる飲み放題プランの紹介が書かれている。店内の壁に貼り付けられているものなので、お店のことを知っているお客さん向けといえる。この内容をプレゼンするというアクティビティを考える。


プレゼンの目的の設定

プレゼンは「聴き手がどうなればOKとするのか」という目的を定めることが重要。単に「プレゼン=説明をすること」と捉えると、聴き手の視点で考えることができず自己満足なものに終わってしまいがち。今回のケースはその設定がちょっと難しいけど、たとえば、当店で宴会を考えている客に「3,000円のコースを選んでもらえるようにする」といった目的でするプレゼンというのはどうか。

情報の特徴

このメニューを見て思ったのは「3つのコースから選んでもらう形で情報が1枚に収められているけれど、値段以外の要素では比較が難しい感じがする」ということ。一応、写真はあるし品目も書かれているけれど、パッと見では違いがよくわからないから「少し値が張るけど上位コースにしようかな」という気にならない。まぁ、お店としても予算額で選んでくれればそれでいいのかもしれないけど、ここは上位コースを選んでくれた方がお店としては嬉しい、というケースを仮定する。その方がプレゼンする意味も見いだしやすいし。

プレゼンの条件

このメニューを見せる代わりに、PowerPointのようなスライドツールを使って情報を提示することにする。持ち時間は60秒。目的は上に書いた通りで、聴き手が狙い通りに動いてくれるような工夫がなされているか、がプレゼンの評価のポイント。

アクティビティの手順

まず話す台詞を書いてもらう。これは、読み上げるための原稿ではなく、口頭説明をそのまま書き起こしたもの、という意識で作ってもらう。原稿を書きましょう!だと、しゃべりにくい言葉や言い回しを選んだり、やたらと一文が長い冗長なトークになるから。プレゼン本番は暗記してやってもらうわけだけど、頭の中にあることを文字にしておくことで、余計な内容を削ったり、わかりにくい構成に気づいたりできる。プレゼンをしてもらう時間がないときに、この台詞を見れば(ある程度は)質が判断できるのもポイント。

台詞が書けたら、台詞の各箇所にスライドを割り当てるような形で、スライドを作ってもらう。スライドは口頭説明を補助するもの、自分がしゃべりやすいようなスライドを作ることを心がけてもらう。スライドの枚数は、初心者ほど多めを推奨。スライドの作り具合によっては口頭説明の仕方も変わってくるので、イメージを頭に描きながら台詞の方も変更していく。

スライドができたら、ひたすら練習。時間に収まることが大前提。練習していて手間取る箇所は、スライドや口頭説明に手を入れる。時間になったら本番。

クラスやグループ全員のプレゼンが終わったら、評価の時間。自分が工夫した点、他の人のプレゼンで良いと思った点などをシェアする。スライドのタイプや構成のパターンが偏ってしまった場合は、参考に講師が代案を出してもいい。プレゼンの目的に沿ったパフォーマンスだったか、意図をもって見せたり話したりできたかを相互評価の軸とする。

捏造した情報の追加もアリ

アクティビティなので「本当っぽい情報なら勝手に捏造してもOK」というルールを追加してもいいかもしれない。今回のプレゼンの目標は「3,000円コースを注文してもらう」だけど、正直言って価格と品目を挙げるだけでは差別化が難しく訴求力が弱い、という気もする。そこで「お客様の7割は3,000円コースをご注文されますね」などという台詞を入れても良いことにする。ただ、それだけだと嘘っぽい場合もあるから、その理由などとセットで語ってそれらしい流れを作ってもらうとか。

プレゼンでは「推したい商品の魅力を訴求するのに十分な情報が手持ちにない」という場合がけっこうある。会社の新製品を紹介するなど、プレゼンで語る対象が誰かに指定されたものである場合、その商品の良いところを見つける努力が必要だ。自分で徹底的に使い込んでみたり、使っている人の話を聞いたり、作った人の話を聞いたりして、情報を収集していく。そうして得られた情報の中で何を使うかを考えるとき、プレゼンの聴き手が必要としているもの、聴き手が魅力を感じることが基準になったりする。だから、聴き手の気持ちを想像して「効く」情報を考えるのも立派なスキルだ。アクティビティであれば「情報を捏造する」という条件を用意することで、そういう方向に意識を向けさせることができる。

アクティビティを通じて学んでもらうポイント

まとめると、以下のようなスキルに焦点を当てるアクティビティということになる。

  • プレゼン対象である情報の特徴を読み解く
  • プレゼンの目的に沿って情報を取捨選択する
  • 筋の通った構成の口頭説明をする
  • 説明を補助する適切なスライドを作る
  • 構成やスライドにいくつかのパターンがあることを知る
  • 聴き手の視点で情報を評価する
  • 1分という時間でできることを体感する

おわりに

まぁ、こういうアクティビティを1回やってスキルが身につくなら素晴らしいけど、実際はそううまくはいかないもの。手を変え品を変え繰り返すなかで、だんだんとわかってもらえたりする。プレゼンは場数だなんて言われるけど、単に回数を重ねればいいというわけではなく、1回ずつ真剣に準備して、適切に評価して、同じ失敗を繰り返さないようにすることが大事だと思う。それには、こういう身近なネタを練習の題材にするのが良いと思うのです。

ちなみにこの居酒屋さん、メニューも超オシャレで店員さんも愛想がよくて、もちろん食事もおいしい良い店でした。また機会があったら行きたいです。