コラボレーションって何なのか(@コラボレーションカンファレンス in 京都 2010)
- 2010年07月29日
昨日の夜は「コラボレーションカンファレンス in 京都 2010」というイベントに参加してきました。このイベントの存在自体を当日の昼まで知らなかったのですが、これまでこのブログで何度か取り上げているPLACESの堀内敬子さんが「京都でしゃべります」とTwitterでツイートしてるのを見て、急遽参戦。東京の人のしゃべりを生で聞ける機会ってそうないので、ここは機会を逃すまじということで。
イベントは2部構成で、前半はテーマである「コラボレーション」に関する理論的枠組みの例とケーススタディの紹介、後半はグループディスカッションという形式でした。もっと一般的なセミナー会場をイメージしていたのですが、いくつかの島を囲んで飲み食いしながら楽しむスタイルで、ちょっと大学のころにやっていたゼミを思い起こさせるリラックスした空気でしたね。
そもそも「コラボレーション」って何なのか?という問いが、参加する前から僕の頭の中に強くあって、第1部の理論やケースの話を聞いても考えがまとまらなかったので、第2部のディスカッションでメンバーに聞いてみました。そうすると「ただ単に複数人がいっしょに何かするということを指すのではなく、そこから一歩進んだポジティブな共同/協同/協働の状態」という認識はほぼ共通している感じ。ただ、その具体的な姿や成立条件は人によってそれぞれ考えているところが違っていて、今自分がやっている仕事の状況の説明と、改善したい方向性とその模索を語り合うというのが、僕の参加したグループのディスカッションの軸になりました。
挙げていくとキリがないくらい話題には事欠かなかったのですが、僕は第1部の話を聞いて大きく2つのことを感じたので、その話を中心に以下書いていきます。
ひとつは、プロジェクトの分析手法。ケーススタディとして、今回のスピーカーであるヌーラボの橋本さんやPLACESの堀内さんが参加したプロジェクトが、コラボレーションの構成要素が時間の推移とともにどう変化したか、という分析報告がありました。この構成要素とは、目標を同じくしているかとか、何でも話せる空気があるかとかなんですが、過去のプロジェクトに対して「この要素の数値がこのように変化した」と振り返って分析する手法だけでは、現在進行中のプロジェクトの状況を改善する(コラボレーションの質を向上させていく)ことは難しいかもなーと感じたんですよね。
僕は大学にいた頃、まわりの研究者仲間の多くが質的研究をやっていて、自分の日記や他者からの定期的なインタビュー、観察などの記録を分析して、リサーチクエスチョン(例えば「彼女にとって教えるということはどういうことなのか」とか)に対する答えを導く姿を見てきました。これにはその手法が使えるところも多いだろうなーと思いながら、同時に現在進行中の案件で直面している問題をどうクリアしていくか、そこも実践に身を置く自分としては気になるわけです。
このあたり、僕がプロジェクトマネジメントを勉強するようになったきっかけでもあり、最近めっきり更新が止まっちゃってる「こちら『日本語でケアナビ』開発室」で形にしようともがいたり、いつか本でも書いてみたいなーとか思ってる部分です。同じグループに、ヌーラボの橋本さんと、PLACESのえつこさんがいるという幸運だったので、お二人にももっと話を聞けたら良かったのですが、終電の関係もあり懇親会には参加できず超残念。
もうひとつは、コラボレーションを可能にする属人的なものはあるのか、それは重要なものなのか、ということ。堀内さんの紹介したケースでは、デザイナーやシステムエンジニア、プロデューサーなどの構成メンバーは、各々の会社の代表をやっている人たちだったので、自己主張が強くコミュニケーションの遠慮がなかったことがコラボレーションの成立にとって大きかった、と話されてました。これには納得できる部分も多いのですが、じゃあコラボレーション資質なるものを持つ人が集まらないとコラボレーションは成立しないのか、ということも感じるわけです。
ディレクター(プロデューサー)の仕事の1つが人事、スタッフをアサインすることだと言われますが、僕の普段の仕事の規模は大きくはないので、そもそもアサインの権限がない場合も多いんですよね。技術系の人間が僕のみ、あるいは良くて僕のアサインしたシステム系の人がいるくらいで、他のメンバーはクライアントが揃えた人たちというケースが多いわけです。人が選べない。いるメンバーで何とかするしかないというのが出発点になるわけです。
僕の属性は「教育+Web+デザイン」だと思っていて、可能ならディレクションを中心にしたい人なので、全ての仕事は素晴らしいコラボレーションであってほしいと常に思っています。僕のコラボレーションの定義は、何らかの垣根を越えて、ワクワクしながら、互いをリスペクトしてクリエイティブなものを生み出せるような協働作業のこと。仕事と遊び、コラボレーションは遊びに近いかも、という意見も場に出ていましたが、僕はオンオフを切り分けない性格なので、仕事も常にコラボレーションを狙っています。
コラボレーションに必要な属人的な要素は、僕の場合は、教育関係者なら教育観が近いこと、技術者ならオープンに話せることかなぁと思いますが、それだけではコラボレーションって成立しないと実感しているのも事実。そこで、プロジェクトの空気作り、場のデザインが重要になってくるので、そこは普段からものすごく気を遣っています。クライアントをしっかりとプロジェクトメンバーとして関わらせていく感じ。昔、CSS Niteで「Client 2.0」っていうテーマでセッションをやったことがありますが、クライアントをいかに啓蒙していくかというのが、コラボレーションのための必須条件かなと思ってます。
堀内さんは、2007年のWeb標準の日々のセッションで「職場2.0」というキーワードを出されてたので(スライドが残ってないのが残念!)たぶん、メンバーを集めただけではコラボレーションが生まれない場合のこともアイディアとしてお持ちなのかな、と思ってます。橋本さんも「資質というのは客観的に存在するものじゃなく、メンバーが『君にはこういう資質がある』と指摘することで、その人がその資質を持ってることになる」みたいなことを話していて、僕もそう思うんですよね。そういうことが互いに言える空気をいかに作っていくか。ここは堀内さんにぜひとも聞いてみたいと長年思ってるところです。
今回は1つ大失敗をしまして、名刺をほとんど用意できなかったんです。カンファレンスが始まる前に、あちこちで名刺交換が始まったんですけど、動くに動けなくて、ここは発想の転換「あえて事前の名刺交換は拒否オーラを出す」を実験的にやってみることにしました。これは、以前Twitterでヤスヒサ(長谷川恭久)さんと名刺についてお話をしてたときに、「とりあえず交換しましょうという形式的なものじゃなく、話が盛り上がって最後に名刺交換ってのが本当じゃないか」ということがあったので、それ無理矢理やってみようと(笑)。
そのぶん、グループディスカッションでは、場への貢献は当然最優先にしつつ、他の人が言わないようなことも言う、相手の発言を再構成して場に残すという積極的なスタンスで臨みました。結果、名刺交換しましょうって行ってくれる人が何人もいて、ありがたかったです。向かいに座ってくださった橋本さんと交換できなかったのは超心残りですが(橋本さんすみません!)。
僕は名刺交換で声をかけるのってすごく苦手意識があるので、カンファレンス前に自然と名刺交換が起こるのって素晴らしいなと思う反面、やっぱりそういう資質を持った人たちの集まりだからこそだなぁとも思うんですよね。CSS Niteだと司会の鷹野さんが促すのが恒例(?)になってるので、やはり参加者によるのかなぁと。僕が普段関わる人たちは、名刺とか持ってないし、あっても形式的なものに終始する感じで、コラボレーションが起きそうな展開を予期させないですね。だからこそ、名刺交換じゃなくても、互いにコミュニケーションが取りやすくなるような場のデザインを常に考えたいと思うんです。ま、このへんも根が教育者なもんで。
カンファレンスが終わって、えつこさんが「コラボレーションって何か、どうしたらいいのかますますわからなくなってきた」みたいなことを話されていたのですが、答えはもちろんひとつじゃないですし、状況によって変わっていくものだと思うんですよね。そこを探求していくことが、コラボレーションを実現する最も重要な要素で、そのための材料を大量に仕入れたカンファレンスだったからこそ「わからなくなった」という実感なんじゃないかと思います。楽しい宿題をもらったと思えばいいのではないかと。大事なのはここから先何をしていくかですよね。
久しぶりにいろんなことを考える機会を用意してくださったみなさんに感謝。でもこの続きをいろいろ話したいし聞きたいので、その機会を何とか作りたい。やっぱ東京に乗り込む理由を作るのが一番なのかなぁ・・・