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PCC2010分科会「勝たないプレゼンテーションの学びかた」に関する補足

PCカンファレンス2010で、僕の分科会セッション「勝たないプレゼンテーションの学びかた」、および、イブニングトーク「プレゼンテーション・スキルの育成教育を考える」にご参加いただいたみなさん、本当にありがとうございました。

僕個人としてはとても有意義な時間を過ごせましたが、参加したみなさんにとっても少しでもプラスになったのであれば嬉しいです。本記事では、両セッションの補足的なことを書いていこうと思います。

まず、分科会「勝たないプレゼンテーションの学びかた」からです。今回は最終日の最後の枠ということで聴衆の数を気にしていたのですが、並行しているセッションとの組み合わせにも助けられたのか、あと前日までいろんなひとに分科会の告知を入れた名刺を配ったことが奏功したのか、とても多くの方にお集まりいただけました。本当にありがとうございます。

セッションの冒頭にもお話しましたが、僕の狙いとしては、セッションが「プレゼンテーション・スキルについて一人でも多くの人が考え、互いに意見を交わしていくきっかけの場」となることを目指していました。もちろん、分科会は発表20分に質疑応答5分という進行ですので、実質的な意見交換は難しいのはわかっています。それでも何もしないよりは意味があるはず。そう思って準備してきました。

最初に僕のプレゼンの定義を説明し、授業で学生に要求すること、実際の授業の組み立て方のお話をしました。これは、漠然と「プレゼンを考えましょう」などと言っても話が深まらないので、まず自分の実践をケースとして提示すればきっかけになるだろう、という考えがありました。プレゼンの定義については、自分と考え方が違う、指し示す範囲が違う、と思われた方も多いかもしれません。でも別にそれは全然構わないんです。このセッションでは、僕の考え方が正しいか正しくないかではなく、考え方にはいろいろあるということ、でも考えなしにやっていては難しいよね、自分の考え方をもう一度整理してみて、ということが伝わればOKだと思っています。

そして、考え方に対する実践も、セッションでは典型的な部分を取り出して紹介しましたが、実際はもっと試行錯誤で、一貫性がなかったり評価が微妙なものもあります。質問で「学生は魅力的なプレゼンを体験する機会が少ないというが、どうやったらその問題を解決できるか」というのがありました。僕は授業で「身近にあるいろんなものがプレゼン」とは説明しつつも、やっぱりそれだけでは理解してもらいにくい。どうやって理解の仕掛けに落とし込むかは今後考えなければいけません。また、身近という言葉から、プレゼンに対して学生がルーズになりすぎる場合もあるので、その際はゲーム的な形にしたり、時間を厳格に区切って特別な感じを演出したりします。定義に対して一貫した実践になっているかといえば、そうでない面もあります。

大切なのは、プレゼンの定義とか教育方針の厳密な設定ではなく、いま目の前にいる学生に対して何ができるのか、ということだと思っています。僕の言動には当然私の教育観が反映されているでしょうが、現場には様々な制約がありますし、思いとは裏腹な対応をしなければいけない場合もあります。学生に対して「プレゼンの方法の手札を増やして適切に使えるようになりましょう」と教えているのと同様、僕も教育実践方法の手札をたくさん持ちたいと思っています。セッションをお聞きのみなさんも、僕をはじめいろんな人たちの実践と思いをシェアし、自分の中に生かしていってくれたらいいな、というのが僕の願いです。

イブニングトークは、そんな実践と思いのシェアを目的とした場を作るつもりでした。14人の方にお集まりいただき、プレゼン教育で悩んでいる、思いを持っている、あるいは学びたいと思っている様々な方が時間と場所を共有しました。僕の司会進行が下手なせいで、参加者のみなさんが存分に話せるところまでいかず、申し訳なく思っています。ただ、プレゼンテーションというのは、教育の本質的なところと非常に関連すると思うんですよね。こういう機会は、例えばテーマを絞ったりして、毎年何らかの形であってもいいんじゃないかと思います。

セッション終了後、メールやTwitterで多くの方からご意見をいただいています。本当にありがとうございます。せっかくのご縁、1回きりの意見交換に終わらせず、知識や経験のシェアを継続的にできる関係になれればいいなと思っています。僕もTwitterやブログで(どうでもいいことも織り交ぜながら)発信していきますので、何か感じた時には遠慮なく声をかけてください。

最後に、これはまだ全く準備ができていない希望レベルの話ですが、このセッションでお話したことを核にし、ちょっとした本にしようと思っています。実験的な試みも含め、電子書籍という形で世に届けられればと考えています。執筆がこれからなので(笑)出版時期も未定ですが、その日が来ましたらブログでも告知しますので、ぜひ手に取っていただけたらなぁと思います(そうやって自分を追い込む作戦)。

セッションに参加していただいたみなさん、本当にありがとうございました。次回の熊本でまた会いましょう(もちろん、それまでにどこかでお会いできれば、これほど嬉しいことはありません)。