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どんなCMSが良いか?という問いに対する回答

先月書いたことと同じような話ですけど、思うところがあるので微妙に形を変えて書きます。

どんなCMSが良いか?という問いに答えるのは難しい。なんでもそうですけど、製品を端から並べて見ていくとき、それぞれに違いがあることは明白でも、その違いを何らかの優劣という観点で語るのは簡単なことじゃないからです。

僕は、CMSを評価するときの観点として、大きく2つのことを考えたらいいんじゃないかと思っています。ひとつは「何ができるのか」ということ。コンテンツを管理したり、サイト上に表示させたりするうえで、CMSの機能として実現できる内容のことです。例えば「トップページに新着記事の一覧を更新日順に5件表示する」とか、そんな現場レベル・運用レベルの「やりたいこと」です。

もうひとつは「どんな方法でできるのか」という観点。CMSの機能としては守備範囲だけど、実際にそれをやろうと思うと手間や技術や知識が必要、というのは珍しくありません。例えば同じことを実現するのにもCMSによって、管理画面にチェックを入れる、HTMLにIDを付ける、テンプレートタグを書く、PHPを書くといった手法の違いがあります。もっと根本的に、CMSの標準機能で実現するのか、それとも有志のプラグイン頼みなのかという違いもあります。コードを書く場合も、スマートな記述で済む場合と、グローバル変数や条件分岐を多用するなどアクロバットな記述じゃないと無理、みたいな違いもありますよね。

やりたいことを実現できないCMSをわざわざ選ぶわけないので、前者は必要条件だとしても、後者の多くは単純に優劣では評価できません。僕はプログラムが得意ではないので、PHPのコードを書かなきゃ出力コードをコントロールできないCMSは敬遠するし、そんなのエレガントな実装じゃない!と感じます。でもPHPが書ける人にとっては、1行コードを書きさえすれば、テンプレートタグを複雑に入れ子にすることや、管理画面の煩わしい設定作業から開放されるとなれば、なんて使い勝手がいいんだ!と思うかもしれません。これはもう、どっちが優れているかという問題じゃなく、ターゲットと優先すべき価値が違うということ。僕はこういう側面を「CMSの設計思想が自分に合っているか」と表現しています。端的に言うと「好み」の問題です。

また、前者の機能面についても、CMSの膨大な機能を完全把握して製品ごとに比較できる人って、そうそういないと思うんですよね。業務でガッチリ使い込むことで見えてくることも多いですし、プラグインまで含めたら単純な機能比較は意味がないに等しい。メジャーなCMSであれば機能面でそう大きな差がなかったりして、後者の観点を語らないで機能比較表なんか作ったって意味がないと思うのです。

CMS選びで大事なことは、まずは各CMSの機能面での共通項というか、CMSでできることの基本概念と実装パターンを理解すること。そのうえで、自分がやりたいこと(機能面だけでなく手法面も含める)を自分で描くことなんじゃないでしょうか。確かに、素晴らしいCMSに出会ってアイディアが広がることはあります。でも、自分の中にイメージが大してない状態では、CMSの機能の枠組みを超えた評価をすることは難しいように感じます。

僕は、最初にブログサービスを知ったときに「HTMLを書かずに更新できるなんて画期的だ」と思いましたし、最初に試したインストール型CMSで「ページ更新の仕組みを自分のサイトに組み込めるなんて衝撃だ」と思いました。そこからは、やりたいことをいかにCMSで実現するかに躍起になっていて、知り合いのプログラマーに「CMSをそんなアクロバットなやり方で使うなんて」と呆れられたことを覚えています。でも、それくらい「自分の利用イメージ」が明確でないと、自分にとってベターなCMSを見つけるというのは難しいんじゃないかな、と思うわけです。