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TalkNoteで改めて実感したこと

TalkNoteというセミナーに参加してきました。場所は静岡駅から10分ぐらいの静岡市クリエーター支援センターというところ。Talk Noteは「遠くの音」という言葉にもかけているそうですが、大阪在住の僕にとって静岡開催のセミナーは(ちょっとした)遠くの音。僕のセミナーへの期待値は半端ないですよ!と主催の勝又さんを事前に脅しつつ参加しました。

感想を先に一言で書いておくと「スゲーよかった!」。講師はインターネットストラテジー代表の角掛健志さんと、KDDIウェブコミュニケーションズの高畑哲平さん。

角掛さんはサイトリニューアルを題材に企画の話をしてくれました。この「企画」というのは、僕なりに言いかえると「何を目的にし、どう現状を分析し、どんな目標を立て、その目標達成のために何をするのかを考える」ということ。枝葉末節ではないデザインの根幹の話です。最初に講義形式でテーマのフォーカスを確認した後、グループに分かれてお題のサイトのリニューアル提案を発表するという流れでした。

グループワークでは、僕は例によって(?)グループの意見のまとめ役を買って出たのですが、限られた時間でメンバー(僕のグループは7人)それぞれがちゃんと参加しつつ意見も集約させていくというのは大変ですね。制作サイドの人が多かったせいもあってか、意見の入りは画像とかレイアウトとかナビゲーションといった具体的なパーツ(サイトの構成要素)に関することが多かったです。もちろん最終的な作業としてはパーツをどう変えるかになるのですが、そのパーツを変えるべきだという意見の裏には、そこを問題だとする一つの考え(判断)があるわけですよね。さらに、その考えを生んでいる理由というのも背後にあるわけです。

例えば、このバナーはもっと上にあるべきだという施策には、このバナーを目立たせたいという狙いがある。なぜ目立たせたいのかというと、利用者にとって魅力的なキャンペーンを告知するものだから。なぜキャンペーンの告知にこだわるのかというと、このキャンペーンはターゲット層に響くものだと考えられ、その存在を利用者に知ってもらうことが顧客獲得の重要な手段だから・・というように。

こうした、施策の理由、背後にある考えを共有しないと、施策の是非を問うわけにはいきません。同じように現状分析をした結果が別の施策になることもありますし、同じ施策でも背後にある理由が異なるということはあるわけですから。なんでそうするの?という疑問符を放置していては、施策を考える上でのコミュニケーションが噛み合いません。いつもいっしょに仕事をしている仲間同士ならともかく、今日初顔合わせのメンバーでコミュニケーションを取っていくには、施策から理由をさかのぼって聞いていくことも大切。そう思って僕はやっていました。時間はわずかでしたし、ちゃんとやれていたか微妙なところですが、その過程でターゲットに関する見方や自己の経験などをみなさんから聞くことができて、個人的には面白かったですね。

各グループの発表は、みんな似たようなマトモなことを提案していて、さすがな感じでした。まぁアクロバットな提案が出る余地の少ないような、あらかじめ計算されたお題だったというのもありますけど。代表発表者の発表の仕方に、そのグループあるいはその人の思考の流れみたいなものも垣間見えて、もっといろんな人と話してみたいなと感じました。

角掛さんの話は、いわばデザインの本質的な話だと感じます。こういう話を、もっといろんな人が聞いて、自分で考え、実践していかないと、Webデザイナーは単に技術や表現に詳しい「作業者」に今後なっていってしまうと思います。それでは業界全体の信頼も上がらないし、大きな仕事も任せてもらえなくなるでしょう。マネタイズという括りではありましたが、普段は非営利っぽい企業(教育関係)とお仕事をすることが多い僕にも大いに響く内容でした。

もうひとつのセッションは、高畑さんが手がけた3つの事業、レンタルサーバー(CPI)、ベリサインクーポンサイト、ホームページ作成サービス(Jimdo)をどうやって成功させてきたかのお話。高畑さんのテンポの良いプレゼンで、非常にスムーズに話が頭に入っていきましたね。また相当にリアルな話をしてくださったので、スゲーと心の中で何度もツイートしてました。

興味深かったのが、これはWeb系のセミナーで例となる事業もWeb系なのに、収益を上げるための施策はWebっぽい要素が小さかったこと。品質の視覚化としての写真やロゴの使い方、ターゲットの感情をうまく捉えた郵送のパンフレット、メディアに取り上げてもらうための箱入りプレスリリースなどなど。単にWebの技術を駆使すればいいというのではなく、相手の立場に立って手法を考えていくことで道は開ける、という感じでしょうか。角掛さんと同じく、本当に大切なのは手法(技術)そのものではなく、その手法をいかに適切に使うかなんだと、改めて感じました。

あと、手法を適切に使ってもやれることにはやはり限度があるので、過剰な期待を持たないことも大事だという話も納得。例えば、そもそも商品が悪ければ売れないよ、という。現実的で冷静な計算も忘れずにですね。

質疑応答の時間で、高畑さんの仕事のやり方、コミュニケーション術を聞く場面があったのですが、やはり事業の手法と同じく、高畑さん自身が相手をよく観察し、相手の感情や立場を踏まえた上で行動ができる方なんだろうなぁと実感。生きるヒントをたくさんいただきました。懇親会では時間がなくてお話できなかったのですが、こういう方の間近で働ける人は幸せだろうなと思いました。

今回は(も?)内容だけでなく、セミナー全体の構成、進め方も注意して見ていました。会場は元小学校の教室と思われる場所でしたが、雛壇も組んであったし、白と黒のツートン、プロジェクタも大画面で見やすく、ちょっとトップランナーのスタジオ的な(褒めすぎ?)いい雰囲気でした。進行は、勝又さんが講師や観客と時おり絡みながら、堅苦しくなりすぎないよう気を遣っているなぁという印象。そういうの大事ですよね。50人という規模のセミナーとしては、ちょうどいい空間演出だったんじゃないでしょうか。適度なライブ感も出しつつ、関連する2つのセッションを2時間ずつやるというのも、集中力も保てて無理のない構成だったと思います。どうもおつかれさまでした。

懇親会は、帰りの新幹線の時間もあって十分にお話の輪に入れませんでしたが、ぜひ今後また会う機会を作りたいなぁ、という人たちに出会うことができました。Twitterではお話してるけどリアルはまだな方とも会えたし、またディレクションがわかる人と出会えたのも個人的には大きかったです。そういう人って今まであまり出会えてないんですよね。たとえ実装技術の話をするにしても、大きな意味でのデザインとしてどうなの?みたいな観点で話ができる人は(もっと必要なはずなのに)まだまだ業界に少ない気がします。

そういう人たちと仲良くなって、いっしょに仕事をしていきたい。そのためには、そういう人たちを見つけることが必要で、それには何かイベントなどをやって場を作らないといけない。できれば一方的に講師の話を聞くだけじゃなく、参加者が自身の経験を自然に場に還元できるような活動とセットがいい。そんな枠組みがあれば、自然と自己紹介をする機会もできるだろうし、オープンに次の展開を互いに模索できると思うんですよね。僕もそういうイベントを考えて、実行していきたいと思っています(大阪のみなさま、ご協力よろしくお願いします)。

今回は名古屋から参加されてる人も多いようなので「これは名古屋まで来る価値あるよ!」っていう何かがあったら、ぜひ声かけてください(すでにa-blog cmsな方々からはありがたいお誘いもいただいていますが)。僕も「これは大阪まで来る価値あるよ!」っていうのを考えてお誘いしますので。よろしくお願いします。

今回はステキなセミナーどうもありがとうございました。僕もこれを励みに今後も頑張ります。