プレゼンでベストな言葉を積み重ねていくために
- 2013年11月18日
西脇資哲さんのプレゼンセミナーが、CSS Nite特別編として来月(2013年12月11日)に品川で開催されるそう。むむ、これは気になる。このためだけに東京に行こうかしら。
追記(2013.11.20):行くことにしました。西脇さん&参加するみなさん、どうぞよろしくお願いします。
西脇さんはマイクロソフトのエバンジェリスト。簡単に言うと、マイクロソフトの製品やサービスをプレゼンする仕事をしている人。そんな彼のセミナー内容は「小野和俊のブログ:マイクロソフト西脇資哲氏に学ぶプレゼンとデモの秘訣」という記事に(しかも超詳しく)まとめられているので、行けない人もこれは必読なんじゃないだろうか。
僕も大学生を対象にプレゼンを教えているし、入門書(電子書籍)も出したりしてる。だからプレゼンにはずっと関心があるんだけど、上記の記事を読んで、西脇さんが大事にしているところと共通する点を感じられて、ちょっと安心した。特に言葉にすごく気を遣っている点は、僕はここまで高いレベルの意識ではないんだけど、すごく共感できるところ。以下にひとつ引用する。
質問と回答を使う。「我々はこうやって危険性を指摘してきたのです」→「我々が行ってきたのは何だったと思いますか?、そう、危険性の指摘」
聴き手に問いかけるような表現にして、間をとリズムを作って、重要なことを体言止めで表現するやり方。ちょっと言い回しを変えただけじゃないか、などと思うなかれ。たったこの1文の表現を目にするだけでも、絵が脳内再生されるというか、空気を作ることができるだろうなぁと思わされる。生で西脇さんのプレゼンを見てみたい。
僕は大学の授業で学生にプレゼンをしてもらうとき、その準備として、プレゼン中に口にすることを一言一句そのまま、芝居の台本のごとく書くよう指示している。全部書かなければならないこともあって、プレゼンの持ち時間は1分程度。それでも学生は「なぜそんな面倒なことを」と言う。確かに面倒だけど、それくらいしないとプレゼンがルーズになっちゃうからだ。
プレゼンでいちばん大事なのは中身、伝えたいこと。その中身が伝わるようにまず工夫すべきは、スライドじゃなく、話の構成と言葉だと思う。話の構成については、以前「プレゼンにおける話の組み立てかた」という記事で書いた。言葉を工夫するというのは、自分が言いやすくて、相手も聞き取りやすく誤解しにくく、自分の狙いや思いの伝わる表現を選ぶということ。
キーワードだけメモして練習もそこそこにプレゼンに臨むと、説明の大半はアドリブになる。最も明快で最も伝わりやすい表現があり、それを事前に思いついていたとしても、アドリブベースで確実にそれを使うのは難しい。言いよどんでしまったり、回りくどい言い方をしてしまったり、すっ飛ばしてしまったりするものだ。
たった1分のプレゼンでも、ポイントとなる局面はたくさん存在する。冒頭のつかみ、視点の提示、アイディアの概要、具体的な例や説明、価値を補強する情報、まとめ、話の締め、といったように。そのすべてでベストな表現を口にする。しかも挑戦は一回きり。本番の緊張のなか、冷静に言葉をつないでいくには、事前にきっちりと言葉を決めて練習しておかないと無理ではないか。
よく勘違いされるんだけど、この事前に書く「台本」は、丸暗記して暗唱するための「原稿」じゃない。これは、自分が本番で口にするだろうことを、前もって頭の中で再生して、紙の上で冷静に検証する作業。だから自分が言いやすい表現を書かないと意味がない。くだけた口語表現や方言を使う場合も忠実にそのまま書く。書いたそばから口にする。少しでも言いにくかったら修正する。文章でいう推敲と同じ。プレゼンは口頭説明が軸になるのだから、それぐらい気を遣うのは自然なことだと思っている。
他の人がプレゼンの準備にどのくらい時間をかけるのかは、見たことないので知らないけれど、たぶん僕の準備時間は長い方だと思う。内容にも時間はかけるけれど、こういう「言葉を選んでは口にして検証する」作業を、脳内再生からリハーサルまでイヤになるくらいやっている。だって、そうしないと不安だもの。お芝居をするときと同じだと考えたら、練習することでしか不安は取り除けないのだと思う。
日頃からそんな感じなので、西脇さんのこのテクニックは、これから意識して検証点やバリエーションに加えていこうと思ったのでした。言葉の印象が強いから、話の展開の大事なところで使えると効果的だと思うし。
あと、たまに聞かれるんだけど、べつに僕は「プレゼンのプロ」になりたいとは思ってない。それよりも日常の様々な何気ない場面で、自然に、自分なりのベターな表現を選んで口にできる、所作として示せる人になりたいのです。それができれば、もちろんプレゼンにも役立つだろうし、プレゼンのようなオフィシャルな場が与えられなくても、相手に何かしらの印象を残すことができるはずなので。