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学習に向き合った次の一手を打てるか – オンライン授業雑感2

続きます、と言っておいて続きを書いていなかった「声も姿も知りません – オンライン授業雑感1」ですが、先日の「2021中東・北アフリカ日本語教育シンポジウム」で、その書こうと思っていた内容を発表してきました。なので、そのときのスライドを公開し補足を加えたものを、続編記事として公開します。

プール監視員な私と学習環境のデザイン from Sunami Hokuto

発表内容のスタンスというか、2020年度の教師としての実感は「ケースにもよるが、フルリモートでも授業はそれなりにいける」でした。同じことを感じた学習者も多かったのではないかと考えています。

注意すべきは「ケースにもよるが」という点です。教師側の要素(教育観や授業スタイル、扱う内容など)や、学習者側の要素(学習環境や学習スタイル、内容理解度など)、その他の要素(他と授業との兼ね合いや学校の制約など)によって、リモートだとかなり難しいというケースは当然あります。

フルリモート万歳!でもなく、対面授業に戻すぞ絶対!でもなく、両者の良いところを生かしながら、教師はもちろん学習者も(そして学校も)うまく学習環境をデザインすることが大切だというのが僕の考えです。

2021年度は、教師と学校の真価がこれまで以上に問われるでしょう。2020年度は、突然の社会状況の変化、有無を言わさぬリモート実施という事情を学生も理解していますから、授業のデザインのまずさ、教師や学校のダメな対応があっても、学生は「先生も大変なんだろうな」とある程度大目に見てくれたかもしれません。でも2シーズン目は言い訳できません。これで全然できてなかったら「この先生(学校)はダメだな」になってしまうでしょう。

この1年で学生の側も「学び方には選択肢があり、合う・合わないがあるのだ」と実感したはずです。だからこそこれからは、自身の状況に合った選択肢を取れるよう教師や学校に要求するはずです。たとえば「こんな講義だけの授業だったらオンデマンド動画にしてよ」とか「この科目は苦手だから対面で手取り足取りサポートしてほしい」とか「今週はいろいろあるんで自宅から受けたいな」とかね。

そうした様々なニーズは、真摯に学びに向き合っている証拠で(ただ出席するだけでの姿勢と比べたら)歓迎すべきことです。とはいえ、それに学校が現実的にどう応えるのかは難しい問題です。それでも、単純にすべての授業を一律に対面ないしはリモートに統一するような雑な回答では、あるいは質の伴わないハイフレックス型授業を教師にやらせるのでは、学生の多くは納得しないし、たぶん黙ってないと思うんですよね。学びというのはそんな単純なものじゃない、ケースによるでしょと、何より学生が痛感しているはずですから。

2020年度の学校は、社会状況的に「フルリモート」という手を打たざるを得ない1年でした。2021年度からは、社会状況など関係なく、学生の方を向いた新しい一手を打てるかが、学校の存在価値を左右するのではないかと見ていますし、そうあってほしいです。