僕らは何を買っているのか
- 2009年12月01日
アップルストア心斎橋でMagic Mouseを買いました。なかなか良さそうな使い心地ですが、今回はマウスの使用レポートではなく、このマウスを買う際に経験した出来事に絡めてマーケティングっぽい話を少し。
Snow Leopardにチェンジした途端マウスの挙動が怪しくなったので、これはマウスの故障なのかなぁと思い(OSとか他の問題だったらイヤですが)マウス買い替えを検討。マウスと言えばアップルの新製品のMagic Mouseなのですが、これは従来のマウスと比べて平べったいので、その使用感が気になっていました。ということで、ヨドバシ梅田店に行って触ってみることに。
店頭設置のiMacで早速試そうと近づくと、思わず「な、何ィ!」と声を上げてしまいそうなMagic Mouseがありました。マウスの表面、しかも左クリックするべき位置に盗難防止用の器具がでーんと取り付けられているのです。思わず僕は近くにいた店員に声をかけました。そうすると、その店員いわく「あーこれ盗難防止用のタグなんです」と。僕は「いやそれは知ってるんですけど、ここだとクリックができへんやんっていうかw」と言うと、黙ってマウスに手をやり、人さし指を右側に大きく寄せて、カチカチとクリックをテストするじゃないですか。で、いけますよっていう対応。僕はカッチーンときて「そうですかじゃあアップルストアで買いますさようなら」と心の中でつぶやいて(直後にTwitterにはつぶやいたけど)足早に立ち去りました。
Macユーザーじゃない人にはピンと来ないかもしれないのですが、Macの付属マウスは独特なものが多くて、単品でも販売してるので使用感を知りたくて触る人は結構いるわけです(もちろん店頭のデモ機を操作する役割もありますけど)。だから「クリックできれば何でもいい」んじゃないんです。そのマウスの使い心地がテストできないと意味がないんです。
盗難防止用のタグを付けるなと言いたいんじゃないんですよ。邪魔になりにくい位置に付けてくれればいい。実際他の同じMagic Mouseには側面や後ろの方などにタグが付いてました。だからまぁ、たまたま付けた位置が悪いものだったのでしょうが、それを見て何とも思わない、客に指摘されても何が問題なのかわからない店員が「Macはいいですよーどうですかー」と言って売ろうとしてることに、僕はすごく残念な気持ちになりました。
不景気だから、各家庭にパソコンが行き渡ったから、コンピューターが売れないそんな理由を耳にしたりしますが、この店員の感覚を目の当たりにすると、本気で売ることを考えてるのか?と思ってしまいます。カタログ記載のスペックや、筐体のデザインでコンピューターを買う人はいますが、新規購入者の「コンピューターで何ができるのかを知りたい」気持ちや、買い替え検討者の「新しくしたらどんないいことがあるのか」という疑問には、ただ「触れない状態でディスプレイされている」パソコンでは応えることができないと思うのです。そんなお客さんにアプローチするのには、何らかの工夫がいるはず。
前にも書いたことがあるのですが、デモ機でネットができない、まともなアプリが入っていないのはどうなんでしょうか。もちろん、ネットを無制限にされたら問題が起きそうなのはわかるし、販売モデルに入っていないアプリを入れるわけにはいかないというのもわかります。それに比べて、アップルストアはネットに制限はないし、標準搭載のiLife以外にも、LogicやIllustratorなどのアプリが入れられていたりします。友人を連れていって、楽しそうなアプリでちょっとしたデモを見せることだってできます。スクリーンセーバーで流しているデモ映像にも、気さくに声をかけてくるスタッフ(これは好き嫌いあるんですが)にも、Macの魅力を伝えようとする意志が感じられます。
MacとWindowsでは状況も条件も違うし、アップルストアでの見せ方がベストだとも思いません。もっと上手いプレゼンテーションの仕方はないものかなぁと、僕も考えたりもします。ともかく、製品を通してどんな価値を売ろうとしているのかを、お客さんにもっとわかりやすく示していくことが必要なんじゃないかと思うのです。
モノを売っているのではない、価値を買っていただくのだ。マーケティングの入門書にも書いてるじゃないですか。