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教材をカタチにする際に必要なこと

僕が日本語教材の制作を手がけるときは、アイディア自体は教師から持ち込まれることが多いです。なので純粋に企画からというわけではないのですが、アイディアを制作物に仕立てる過程で、ほとんど企画レベルで考えているなぁという自覚があります。

教材を作りたいと思っている教師は、自分のアイディアを整理するのに、以下のフォーマットで作文をすると良いのではないか、と思っています。

  • 誰が(例:自分の担当クラスの初級日本語学習者が)
  • いつ(例:読解などの授業中に)
  • どこで(例:教室で)
  • 何のために(例:教師が黒板に書いた、知らない漢字を調べるために)
  • どうやって(例:手元の自分のスマホを使って)

つまり、教材の利用場面をきちんと具体的にイメージしよう、ということですね。

こんな教材を作りたいのですが・・という相談を受けて、僕が最初に考えるのが、本当にそういう利用者は存在するのか、ニーズや場面を教師が都合よく捏造していないか、です。そこがクリアしていそうであれば、その教材が期待される役割に合った形かを考えます。何とかいけそうだなぁと感じたら、コストなどを提示して理解が得られれば引き受ける、という流れです。

その流れに乗せるためにも、まずは「作りたいもの」を教師がきちんと説明できる状態になっていることが大事です。ここでいう説明とは、細かな機能を挙げたり画面レイアウトを作って見せたりすること、ではありません。それは後でどうにでもなることであって、本質的なものではないんです。その教材が学習のなかでどのように機能するのか、そのイメージがきちんとしていることが重要です。

なので教師には、自身が日々身を置いている学習の場面において、教材が機能するポイントがどこにあるのか、どんな切り口が求められているのかを、見いだす目が必要になってきます。これってまさに、教師のスキルであり教師の仕事だと思うんですが、この段階から僕がサポートしないと始まらないようなケースが多くて、自分はもう開発者の域を超えた仕事をしてるなぁと感じます。最近の学会発表のテーマも、これって教師研修じゃね?みたいな内容になってきてますし・・・。

ならばそれを仕事にすればいいじゃないか、という考えではいるのですが、ちょっと困るのは、これを「教材開発に必要なプロセス」であり「自力でできないなら仕事として外部に協力をお願いする必要がある」と思っていない教育関係者が多いことなんですよね。平たく言えば「開発の仕事をお願いする前に、ちょっとメールで聞けばいい」みたいに考えている。ちょっとの話じゃすまない人ほど。

べつに僕はこの記事で「そういうレベルのご相談は有料でござるッ!」と強く主張したいわけではありません。もちろん最初から制作プロセスとして予算を組んでいただける方が嬉しいですし、実際に「相談が長くなるようならお仕事として請けます」と伝えています。

それよりも何よりも、単純に心配なんですよね。現場の教師が学習設計の基礎的なスキルに欠けていることと、そのことに関して危機感を持っていないように見えることが。

これなら、よく設計された学習教材と、ユーチューバーによる楽しい動画と、励まし合えるSNS上の学習コミュニティがあれば、たいていの場合は教師とかいらないんじゃね?と思ってしまいます。もう教師はそういうことを真剣に考えないといけない時代じゃないでしょうか。