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Excelから学んでほしいこと

これまで授業でいろいろなアプリを教えてきたけど、たとえば大学生のうちに学んでおいたほうがいいアプリを1つだけ挙げるとしたら、Excelがいいんじゃないかなーと思っている。

毎年のように学生にも聞いてるけど、Excelはあまり人気がない。インターフェースは「使ってて楽しい」という感じじゃないし、同じOfficeのWordやPowerPointと比べると「何に使うか」が(学生にとっては)見えにくいアプリだという。なので「Excelはそれ自体が楽しいものじゃなく、自分が少しでも楽をするためのアプリだから」などと最初に説明したりしている。

学生のころにする作業って、最初から最後まで自分ひとりで完結することが多いし、処理する量もたかがしれている。だから効率とか精度とかは自分基準で甘くなりがち。でも、卒業してそれが仕事になると、作業の前後で誰かや何かがからんでくることがほとんどだ。もらったグチャグチャのデータを丁寧に処理したり、作ったデータを渡す相手(人だったりアプリだったり)に合わせて整形したりすることが普通になる。そのプロセスで四苦八苦することで、より良いデータの作り方、処理の仕方に目が向くようになり、Excelのありがたみも見えてくるんじゃないか。少なくとも僕はそうだった。

だから学生のうちはExcelの使いどころがわからなくても仕方ない、わからないから勉強のモチベーションも上がらない、というのは一理ある。でも、卒業後、学びたくなったときに気楽に学び直せるのは、面倒見のいい先輩がいる人か、市販の書籍などで独習するスキルを持っている人ぐらい。改めて学校に通うのは難しいのが現状だ。だから学生のうちに、少しでも有用性に気付いてもらうか、独習スキルを身に付けてもらいたい、と担当講師としては思ったりする。

もう少し言うと、Excelというアプリを通して、仕事をしていく上で大切なことを学んでもらえたらいいな、とも思っている。

さっき、卒業して仕事をするようになれば「望ましいデータの作り方や処理の仕方」に目が向くようになるかのようなことを書いたけど、何年仕事をしても、なんだこりゃみたいな品質のデータを渡してくる人、そしてそのことをなんとも思わない人というのは一定数いる。イラッ☆とさせられることは避けられない。

でもそれは、逆に言えばチャンスでもある。起こりそうなトラブルを事前にイメージできれば、被害を最小限に抑えるような指示を出しておける。よくあるミスの対応ノウハウが身に付けば、仕事のスピードも上がる。きちんとツボを押さえたデータを渡すことができれば、相手には感謝される(かもしれない)。いわゆる「仕事のできる人」になるには、そういう想像力も不可欠であり、Excelはそれを学ぶのによい教材だと思う。

学生を見ているといつも感心するのが、指示された操作をトレースしたり、その操作手順を覚えるのは、本当にスムーズだということ。不親切なインターフェースのアプリはすぐ投げ出したくなる僕と違って、文句も言わず操作をする。でも、なぜそういう手順を踏むべきなのかとか、もっと楽で分かりやすい方法はないのかとか、これ何のためにやるんだろうかとか、そういうツッコミを入れることは少ない。アプリの操作に自分を没入させないこともまた、アプリを使いこなすうえで大事だということにも、できれば気付いてほしいと思う。