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本質的な問題はそう簡単に古くならない

電車の中で退屈なのがイヤなので、僕のカバンにはいつも1冊何らかの本が入っています。本といっても文庫本サイズであることは非常に稀で、雑誌かIT系の専門書をメインに、ひどいときには数百ページもの本がドスッと入っています。重いけど、それでも読みたい気持ちが勝つのです。

毎日本を買うわけにもいかないので、昔読んだ本を本棚から引っ張り出してくることも多いです。自分でもびっくりするくらい内容を忘れているので(笑)2回目も結構楽しんで読めます。その中で、1年に1回くらいのペースで読み返してるのが「des [デス]」という雑誌。技術評論社発行なのですが、第1号の「マクロメディア特集号」で終わってしまった、雑誌というよりムックな本です。

この本の中の、福井信蔵さんと北村健さんの対談が特に面白くて、何回読んでも「そうだよなぁー」と思わされるんです。対談のテーマはRIAなんですけど、制作全般を俯瞰的に捉えての真っ当な言葉が次々と出てきます。読むタイミングで、その頃に自分が経験したことなんかと重ねたりして、毎回発見があります。

前にも書いた気がしますが、僕がよく思い出す、北村さんの鋭い発言を引用しておきます。

ホントのプロが作ったものを見て、「あ、ここあかんな」って思うところがあったとして、これが100%その人のスキルじゃない。そういう風な見方ができるかできないかっていうのは、ものすごく違うんですよ。本来、大きな仕事をしていると、そこでできなかったこととか、どうしてもそうしなければいけなかったこととか、含まれているわけですよ。そういう見方をできるかできないかっていうのは、すごく違うと思う。つまり、事情をふまえた上での完成度があるわけです。しょうもない人は「ここどうなん?」って言いますから。アーティストが作品を出してるんじゃないんだから。僕はいつもそういう見方をしますね。もし、おしいっていうサイトがあるなら、「ここまではイイ」っていう部分までを自分の中にインプットする。

人のことを好き勝手に言うのは簡単ですけど、自分がそれをやると考えたときに、自分は何をどうすることができるのか。そのことを冷静に考えた上で、揚げ足取りに終始するのではなく、評価すべきところはきちんと評価し、自分の血肉に変えていく。この考え方は忘れないでいようといつも思っています。

この対談と、あとちょうどその前の記事(中村勇吾+遠崎寿義+足立裕司+栗田洋介の4人によるシンポジウム)を読むと、2004年発行でもう5年も前なのに、いろんな部分が今と変わらず問題として残っていることを実感します。Web業界は移り変わりのスピードが速いといいますが、本質的な部分はそうそう変わらない。だからこそいま何をするのか。やっぱり定期的に読み返そうと思うのでした。