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経営を学ぶということ(CSS Nite LP 30に参加して)

週末は「CSS Nite LP, Disk 30『直視しない人が多いけど、軽視できない仕事とお金の話』Pt.2」に参加していました。7月にあったのとは前編・後編というセット的なイベントで、このメンバーなら東京まで聞きに行っても絶対損はしないだろうなと思い、詳しい内容が公開される前に速攻で両日とも申し込み。今回は台風の影響で参加が危ぶまれましたが、結果的には大きなトラブルもなく楽しむことができました。

前回の記事にも書きましたが「お金の話=経営の話」ということで、普段はテクニカルな話題も多いCSS Nite(というかWeb業界の同種のイベント)において、とてもチャレンジングな試みだったと思います。

デザインは正解がないからこそ面白い、と僕は思っています。ここでいうデザインとは、コードの書き方やグラフィックツールの使い方などのミクロな話ではありません。そういうのは、必ず1つとは限らないまでも、ベストプラクティス的な解法を紹介しやすい話であり、知識として伝授しやすいものです。

そうではなく、もう少しマクロな話、パーツやページの単位ではなくサイトやサービス、事業全体で何がどうあるべきなのかという話には「こうしなさい」という話はありません。セオリーはあるでしょうが、セオリー通りにしなければうまくいかないわけではないし、同じ状況で同じことをしたとしても、運によって結果が大きく変わることだってあります。

だからこそ求める結果を得るのは難しいわけですが、それゆえ自分なりの判断、個性や価値観のエッセンスを加える余地があり、前例のない形で成功を得る楽しさも残されています。パターン通りにやれば勝てるゲームをやるのほど、つまらないことはないですよね。それなら機械にやらせて高みの見物をすればいい。

経営もそれに通じるところがあり、先人の採ってきた方法を知ることはカードを増やすことにはなりますが、必勝カードなどないし、必勝カードを求めて話を聴くという姿勢はちょっと違う。僕はそう思っているので、どんなカードがあるのか、そのカードはいかにして見つけられたのかを知ろうと思って聴いていました。

結果、やはりそれぞれのカードには、カードの持ち主の個性や価値観が色濃く反映されていました。カードを切るというのは、決断の積み重ね。それはその人の人生そのものです。当然、第三者から見れば好き嫌いもあるでしょう。簡単にマネできないことの方が多いはず。でも、そこから自分のオリジナルのものを作っていけばいいんだから、難しいけど自由で楽しくてやりがいがあると思える。というか、そう思えない人はデザインにも経営にも向いてないんでしょうね。

僕は去年まで、調理師学校で飲食店経営の講義を5年ほど担当していました。自分自身に飲食店の経営経験があるわけではなかったので、授業のためにその手の本を読み漁りました。学習者にすれば「そんな現場も知らない教師からは、所詮は教科書的なことしか学べない」となるのは事実でしょう。でも、たとえその教科書的なことであっても、改めて体系的に学び、自分の中の他の経験と結びつけることで、自分に活かせることは相当にあります。そして今回のイベントのような機会がめぐってきたときに、先人の話から多くのものを吸収できる(と少なくとも自分ではそう思える状態になる)のだろうと思います。

実践的なノウハウというのは、結果に大きく影響する知識要素と言い換えられます。それゆえ価値あるものですが、なぜそれが他の様々な知識に比べて実践的であるのか、なぜ結果に大きく影響する要素とされるのかが分からない状態では、それを知っていたところで使い所が分からない、効果的に使えない、というケースは(そのノウハウの価値が大きければ大きいほど)多いような気がします。それなりに時間をかけてでも基礎からやるというのは、決して回り道ではないと感じます。

鷹野さんのセッションでABC分析の話がちらっと出ていたのですが、これについては、僕の場合は上述の飲食店経営のメニュー分析で学んだのが最初でした。売上の多くを稼ぎ出すメニュー、つまり単価と売上数の積が大きいものに着目するという方法です。でも分析方法は当然これだけではなく、たとえばマトリックス分析というのも同時に学びました。商品の原価の割合、つまり利益率の軸も追加してメニューを見直せ、と。この考え方だってWeb制作でも使えないわけではないですよね。その仕事の効率は上げられるものなのか、今後の展開につながるものなのか、という視点も含めて現状を整理するといった具合に。

Web制作の技術的な話にしても、たとえばSassなんかを導入した経験があるデザイナーであれば、処理のロジックや環境構築についての体験が、プログラムを理解する助けになる(少なくとも抵抗感は減る)はずです。というか僕がそうでした。GUIのアプリを使ってショートカットで手軽に導入するのも手ですが、基礎的なことに面倒がらずに手を付けておくと、後々違ってくることはあります。

知っている人からすれば当たり前の話でも、その当たり前の部分が整理できていなければ浅く限られた理解しかできない場合があります。たとえば野田さんのバランスシートのデザインの話のように、今回のセッションで見聞きしたことから学び直しをしていこう、今度登壇者にお会いしたときに質問ができるように、より深い話が聞き出せるようにしよう、そう思えた貴重な時間でした。