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キャラ愛を大切にするゲームデザイン

友人のでぐちさんが、ポケモンについて以下のような記事を書いていました。

ポケモンから考える「ユーザー層に合わせた楽しみ方の提案」の考え方|ふにろぐ

タイトルからは、一見ポケモンから一般論につながるような話に感じますが、最後までポケモンの熱い話です(笑)。僕はポケモンを遊んだことがないのですが、この記事に出てくる「ポケモン廃人」について、ちょっと興味を持ちました。でぐちさんいわく「それこそポケモンに命をかけているといっても過言ではないほどの時間と労力をゲームに注ぎ込んでいる」というポケモン廃人が、世界中にいるというのです。

一定以上の人気のあるゲームでは、廃人と呼べるほどやりこむユーザーが出てくること自体は、特に珍しくないでしょう。ゲームによってそのシステムが違うので、なぜそこまで時間と労力をかける気になるのか、その理由も違うのかもしれません。

ただ、ポケモンはかなり特殊なゲームだと僕は思っています。小学生の頃から大人になった今でも、10数年間ずっとポケモンを遊び続けている、そういう知り合いが周囲にたくさんいます。そんなゲームは他に聞いたことがありません。ポケモンがよくできたゲームであることは間違いないのですが、そこまで長期間プレイさせ続ける、人の心を掴むものはなんなのか、すごく気になるのですよね。

そこで、でぐちさんに聞いてみました。先日のイベントの登壇前に(笑)。まったくロジカルではないけど、と前置きした上で「愛ではないでしょうか」という答えでした。ポケモンにはたくさんのキャラが存在していて、気に入ったキャラをずっと使い続けられるシステムがあり、長くプレイしつづけることでさらにそのキャラへの愛着が増していく、と。なるほど。

ところで、僕がこの1年ほど遊び続けているスマホゲームに、チェンクロ(チェインクロニクル)とモンスト(モンスターストライク)があります。ゲーム自体の出来の良さもあるのですが、僕はこのゲームのユーザーが語り合っている掲示板を見るのが好きで、ゲームのプレイ時間より長く見ているかもしれません。その掲示板で語られる、キャラに対する議論。どのキャラが強いかというテーマは誹謗中傷合戦にもなりやすいのですが、強さや攻略そっちのけでキャラを愛でる、ネタにして話を楽しむ様子が、特に読んでいて面白いのですよね。もうなんかゲームを超えた物語が編み出されていっている感じなのです。

基本無料のスマホゲームの場合、運営側がコストを回収する手段は、主として「ガチャ」と呼ばれる、キャラ入手の有料くじ引きになります。ユーザーは欲しいキャラが出るまで熱くなってクジを引く。言い換えれば、ガチャを引きたくなるようなキャラを絶えず追加していくことが、ユーザーにお金を使わせる手段になるわけです。

その流れでいくと、より魅力的な(多くの場合は「強い」ということが大事になりますが)キャラを手に入れるにつれ、それまで使っていた手持ちのキャラはだんだん使わなくなります。ずっと手持ちの古いキャラで満足されたら、追加でお金を使ってくれないので運営側としては困るわけですしね。でも掲示板を見ていると、新しいキャラの魅力が語られるのに負けないくらい、既存キャラへのこだわり、そのキャラの居場所がなくなっていくことの悲しさも語られるわけです。自分の好きなキャラが産廃になるのは悲しい、上位互換は出さないでほしい、弱いと言われたって意地でも使い続ける、というように。ゲームが長く続けばそのような展開になることは、ユーザーは頭ではわかってはいるのですが、でも気持ちはね・・という感じです。

ポケモンがそうした問題をゲームデザインとしてどう解決しているのか、今度でぐちさんに会ったら聞こうかと思うのですが、いわゆる古参ユーザーから継続的にお金をいただくには、こうした「愛着のあるキャラを大切にし続けられる仕組み」がゲームデザインとして重要なのかなと思っています。

まぁ、古参ユーザーは適度に切り捨ててユーザーの入れ替えを行う方が収益モデルとしては望ましい、という可能性もありますから、何が正解かはわかりません。ただ、1年以上遊んでいる僕からすると、追加でお金を払う動機の何割かは、よいゲームが長く続いてほしいから、という応援の部分もあるんですよね。キャラへの思い入れが強くならないタイプの僕ですらそうなので、愛着を持っている人はなおさらそういう側面がある気がします。

ゲーム好きな人からすれば、何を当たり前のことを長々と書いておるのだ、という感じかもしれませんが、このあたりのことを論じた資料とかってないんですかね。あればぜひ読みたい。こういう設計の話は大好きなのです。

・・・と、こんな記事を書いては消しを繰り返しているうちに、任天堂の岩田社長の訃報の知らせが飛び込んできました。任天堂のゲームが大好きで、特にゼルダの伝説はシリーズのほとんどをプレイしている僕には、信じたくない知らせです。危機が続くゲーム業界に対する、岩田さんの次の一手を楽しみにしていたのに。でもまぁ、そっちの世界でも、岩田さんの新しいゲームを待っている人がたくさんいるのでしょう。ゆっくり休んで、またみんなを楽しませてくださいね。