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返し方のTipsを学ぶより説明の方法を模索しようよ

考えさせられる記事があったのでブログる。その記事は以下。

クライアントに「とりあえず作ってみて。みてみないとわからないから」と言われた時のディレクターの返し方 | Webディレクターズマニュアル

記事のひとつの結論として「ディレクターが前段階で物申してやればいい」と書かれているんですけど、いや「物申す」なんて強い言葉を使わなくても、普通にコミュニケーション取ればいいんじゃないでしょうか。

そりゃ確かに、上から命令するようなクライアント、こちらの話をロクに聞かないクライアントもいるでしょう。人間いろいろです。そういう人とは(別にWeb制作の業界に限ったことじゃなく)お付き合いしないように仕事の舵を取っていけば良いと思うのですよ、基本的には。

が、もとのソースであるTwitterのツイートたちを見ていくと、なんだか「あるある」的な共感が思ったより多い。そういう大変なクライアントと仕事をしなきゃいけない現場が少なくない、というのはある程度事実なのかもしれません。でも「見てみないとわからない」というクライアントがすべて問題アリなのかというと、そうでもないんじゃないかと。

クライアントの「とりあえず作ってみて」にWeb制作者が反感を覚えるのは、大きく2つの理由がある気がします。ひとつは「そんな少ない情報ではデザインそのものができない」ということ。もうひとつは「作ってから変更要求が次々と来て制作コストがかかる(それに見合った対価が支払われない)」ということ。

どちらの理由も、制作側がどういうプロセスを経る作業をしているのか(つまりデザインとは何かということ)をクライアントが理解していないことに起因している。そう考えると、制作側がまずすべきことは「説明して理解してもらうこと」であって「物申すこと」じゃないと思うのです。

制作コストがかかるということは、仕事のやり方という意味で動かない事実なので、それはもう単純にコストを計算して提示すればいいわけです。そんな金は払えないがやれ!と言うクライアントなら、もうこれは説明の理解云々とは違うレベルの話なので、仕事しないという選択肢も現実的なはず。議論しても仕方ないです。

そうではなく、記事中にある「折れてくれる」クライアントというのは、恐らく「とりあえず作ってもらうこと」にこだわっているのではなく、判断の根拠としてのモノを「見せてもらうこと」と「それにかかるコスト」を天秤にかけたんですよね。つまり不安なわけです。デザインというものがわからないから、望む結果を得られるサイトが備えるべき要素が具体的にわからないから、ここから確実に前に進める道がわからなくて不安なんです。だから「とりあえず」のものでも現物を見れば、自分の目で感覚的に進路を選べると考えている。

クライアントが「折れて」くれたことで、プロジェクトは前に進みますが、その不安は取り除かれてはいないわけです。この先の作業も、その不安からアレコレ要求してくることは想像に難くありません。ワイヤーフレームを詰めるステップで視覚要素にこだわったりとか、Flashコンテンツを入れてインパクトを出そうとか言い出したりするんじゃないかと。そのたびに「コストがかかりますよ」とかアレコレ物申されると、クライアントはストレスがたまるんじゃないでしょうか。

だから制作側は、クライアントが「見せてもらうこと」で解消したいと考えている不安を理解して、「サイトをとりあえず作る」以外の方法で、その不安をやわらげる必要があるんじゃないでしょうか。他のサイトをビジュアルサンプルとして見せるとか、サイトの目的の達成においてビジュアル以外の要素の重要性を示すとか。いずれにせよ、これは説明であり提案であり、クライアントに「物申す」というニュアンスの行為ではない気がします。

その説明ができたら苦労はしないよ!って声が聞こえてきそうですが、確かに難しいです。僕も実際苦労しています。でも、説明が難しいことだから、クライアントも理解が大変なんですよ。理解できないけど、サイトは作らなきゃいけない、失敗したくない、だから「自分がより確実だと思うやり方」つまり「作ったものを見る」ことを希望する。自然な流れだと思いますし、制作側も理解できないわけじゃないでしょ。そこでコストとの天秤にかけさせたり、責任持たないとか言うのは、噛み合ったコミュニケーションじゃない。もちろん、仕方なくそういう手を打つことは往々にあるとしても。

だから、そういう返し方を習得していくより、うまい説明の仕方を身に付けていくことを、個人としても業界としてもスキルアップと捉えた方がいいと思うのです。言うほど簡単なことじゃないですが、そこに向かって努力していかないと、結局クライアントが成長していかない。制作側とクライアント側の双方が成長しないと、良い結果は生まれにくいし、業界も成熟していかない。理想論かもしれないですが、僕はそこにはこだわっています。

ということで、いつもの結論に落ち着いてしまいました。ここまで来て「それ昔CSS Niteでしゃべったことやん!」と気付いたので、スライド貼っておきます(笑)