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CMSを考える=デザインの実践を考える

昨年はa-blog cmsをいろいろ勉強して、今年はそれに加えてSOY CMS2にも腰を据えて取り組もうと思っています。で、改めて思うのが、CMSを考えることは自分の「デザインのやりかた」を見直すのにとても役立つということです。

ここでいう「CMSを考えること」というのは、特定のCMSのカスタマイズ方法を知る、ということだけではありません。加えて、そういう「CMSというパッケージをどう使いこなすか」という現場運用から一歩進んで、CMSの開発側の立場も考えながら「CMSとして仕様はどうあるべきなのか」を考える、という意味です。

CMSを使っていると、機能の不足や扱いにくさを感じることは、決して少なくありません。さしあたり今直面している問題を解決しなければなりませんから、不満を漏らしつつも試行錯誤し、プラグインを探し、フォーラムに質問し、最近はツイッターで関係者に相談したりします。そのときに、どんな設計だったら、どんな仕様だったら、どんなインターフェースだったら、このCMSはもっと使いやすいのかということも考えるのです。

これは「自分にだけ都合の良いオレオレ仕様を想像せよ」という意味ではありません。自分自身がそのような仕様を求める理由を考えると、自分の好むワークフローや、自分自身のスキル、案件ごとの事情などが関連していることが見えるはずです。ワークフローやスキルの異なる人ならどう感じるか、別のケースではそれがどのくらいの問題になるのか、そうしたことに思いを巡らせることで、自分の「デザインの実践」を客観的に考えることができると思うのです。

僕が考えるCMSの役目は、ユーザーの「コードを書く作業」を補佐すること。Webサイトはコードでできているから、コードを書かなければサイトを作ることはできません。HTMLが全くわからないクライアントがユーザーであれば、WYSIWYGエディタのような機能によってコードを意識せずにページを作れることが重要になります。Web制作者は、クライアントが安心して使えるシステムを提供するのが仕事ですから、その仕事を助けるような柔軟なカスタマイズができるシステムが望ましい。もちろん、CMSはライブラリやテンプレートのような機能によって、サイト制作を効率化することも求められるはずです。

そう考えると、クライアント向けにどんなシステムが必要なのか、Web制作者にはどんなシステムがありがたいのか、その答えは制作現場に眠っていることになります。でも実際のところ、この制作現場に眠る答えを、これまでCMSの開発側は十分に見つけてこれなかったのではないでしょうか。僕も制作案件ごとに様々な制作フローやニーズを目にしてきましたが、セミナーの懇親会などで人と話すと、さらにもっと多様なケースの話を聞くことができます。CMSの開発側がこれらの声をしっかり漏らさず聞いていくのは、同じ業界で仕事をしているとは言え、簡単なことではないでしょう。既存のいくつかのCMSを見ていると、そのように感じます。

もちろん、集めた声がすなわち最強CMSの仕様になる、というわけではありません。当然、そこから取捨選択して使いやすい形に仕立てていくのは、さらに難しい仕事になります。僕は、大半のサイト制作で活躍するCMSの要素は一定の範囲内に収まる、と思っています。ですので、汎用CMSというのは(どのような形にするのかの難しさはありますが)答えとして現実的だと考えています。実際、先に挙げたa-blog cmsSOY CMS2などは、その思想的な部分はそれぞれの異なるものの、それを形にしつつあると感じます。これからも進化を応援していきたいですね。

一方で、あえて対応するニーズやケースを絞って、ほとんどノンカスタマイズで手間なくサイトに組み込めるようなCMSというのも、もっと出てきてもいいのではないかと思います。範囲を絞ればインターフェースはより「わかりやすく」することができるはず。例えば、ジャンルは違いますが、jQueryのプラグインやzenbackのようなものです。汎用CMSとブログサービスの中間のような、洗練されたパッケージシステムって、僕はまだまだ可能性があるんじゃないかと思うんですよね。そういうの、僕も考えて誰かとサービスにしてみたいです。

良いCMSが出てくれば、制作者も楽になるし、クライアントも喜ぶ。そのためにできることは何か。CMSを使うだけじゃなく、そのプロセスをひとつ上から眺めて、整理し、目に見える形でアウトプットして他者に伝えていくいくこと。そのアウトプットが形を変えてより良いCMSになっていくのではないかと思います。ということで、僕も微力ながらコツコツやってくぞー。