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a-blog cmsの学習コスト

a-blog cmsをMAMPにインストールして試用中。とりあえず既存のテーマのソースコードを見ながら、どう記述すればどんな表示になるのかをチェックしています。カスタマイズの資料が充実しているとは言い難い現状なので、僕と同じようにa-blog cmsを使っている人のレポートなどがないか検索する日々なのですが、a-blog cmsはCMSとしてどうなのか?という評価コメントも見つかるので、あわせて読んでいます。

で、そういう評価の視点の中で特に気になったのが、a-blog cmsの学習コストの捉え方。制作側が、新しいCMSを使いこなせるのに必要なコストの話ね。例えば「a-blog cms|ぷか録」では

確かに制作者に優しい作りにはなっていると思うけど、ある程度の概念や知識が頭にないと構築出来ないという印象はMTやWord pressと大差ないように感じた。

と評されています。問題は、この評価をa-blog cmsの開発側はどう考えるかということ。

a-blog cmsは1つのエントリー(記事)が1ページになる仕組みで、これはMTやWPやNucleusなどと同じです。ブログツール型と言ってもいいかもしれません。このブログツール型CMSを1つも使った経験がない人は、その概念を理解することに時間が必要です。これは、a-blog cmsの出来がどうこうというのではなくて、CMSの1つの基本的な特徴を知るための必要コストなんじゃないでしょうか。もしa-blog cmsが、これまでとは全く違う新しい概念のCMSで、そのCMSの概念が(CMS未経験者にも)非常に理解しやすいことをウリにしているのであれば別ですが、製品を見るかぎりそんな感じでもなさそうです。

一方、例えばすでにMTを使った経験がある人にとっては、MTと違うところはどこなのか、概念そのものが違うのか、それとも管理画面やコードの書き方の勝手が違うのか、そういうことが気になるでしょう。MTとの違いがはっきりわかって、その違いが自分にとってどの程度プラスに感じられるかによって、そのCMSに本腰を入れるかの判断がしやすくなると思うからです。

CSS Nite LP6が「MTの代替となるCMSは?」というテーマだったことを考えると、正確な割合はわかりませんが、CMSとしてMTを使うような仕事を経験しているWeb制作者は多いのかなと思います。もしa-blog cmsの売り込み相手がそういう制作者たちであるなら「MTとエントリーの扱いの概念は似ている。違うところとして大きいのは、入力フォームがWISYWIGじゃないところ。そうした理由はこれこれで、それは開発思想にもつながっている」というようなアピールをすることが大事なんじゃないでしょうか。

いろんなブログのCSS Nite LP6レポートを読んでいて思うのは、現在使っているCMS(例えばMT)の不満を明確に挙げている人が少ないということ。僕はNucleusをよく使いますが、機能の不足や管理画面の出来など、Nucleusの不満点はすぐに挙げられます。不満点を意識しているからこそ、a-blog cmsがそこをどうクリアしているのかに関心があるし、その部分の話を聞きたいと思います。でも、ブログ上でMTの不満点がそれほど聞かれないのは、MTには特に明確な不満点がない(=現状に満足している)か、不満点がすぐ浮かぶほどCMSを使い込んでいないか、どちらかなんじゃないでしょうか。

そうなると、CMSを売りたい側は、聞き手の意識を高める必要があるでしょう。例えば「MTだとこんなケースは困るんじゃないですか?」とか「MTでは管理が複雑化しがちだったこの部分がこんなに取り回しやすいです」とか言うとかね。a-blog cmsのセミナーでも、野球のスコアボードを模した得点入力画面を例にあげていましたが、より汎用的でツボをついた着眼点をもっと提供すべきじゃないかなと思いました。

で、僕のようにセミナーで感化されてテスト環境にインストールして、CMSを使いこなせるように勉強を始めるぞ!となった人が、その後もそのCMSを使い続ける人になるかどうかは、そのCMSに関する情報の手に入りやすさが大きく影響するのではないでしょうか。この点で言えば、a-blog cmsは弱い。公式サイトに順次マニュアルを掲載していっているとはいえ、全然足りない。せっかくセミナーで顧客の足がかりをつかんだのに、みすみす逃してる感じがします。発売直後でユーザーの流す情報量に期待できないのであれば、公式サイドがドキュメントを充実させていかないと。(ただし、この点は他のCMSはできているのか?というと、そうでもないと思うのですが)

その点では、Power CMS for MTを販売している野田さんのところは、そのへんをよく考えているなぁと感じます。売り手であるWeb制作者にとってMTは認知度・理解度が高いから、それをどのように拡張するのかを理解してもらえればいい。MTにはネット上に豊富な情報があり、書籍もたくさん出ています。MTに強い制作パートナーも探しやすい。「そろそろ「もう、MTでいいじゃん」についてひとこと。 (Junnama Online (Mirror))」で書かれていることと同じことになってしまいますが、MTは学習コストを含めた様々なコストが低い、というのは大きなアドバンテージです。

僕がこのエントリーを書いているのは、a-blog cmsよりMTだよ、と言いたいからではありません。まだ試用段階ですが、a-blog cmsは期待を抱かせるCMSだと感じていますし、これから手がける案件にも使えそうだなという実感があります。ただ、本格的に使っていくことを考えると、a-blog cmsは「今後発展しそうな力強さ」が見えにくい部分があるのも事実。開発側の熱い思いを感じたい。ドキュメントの整備スピードというのも、その思いのひとつの形ではないでしょうか。

僕がNucleusを何年も使い続けているのも、実のところそうした「熱い思い」を感じるからだと自分では思っています。こちらはオープンソースなので単純には比較できませんけど、とりあえずまずは開発元のアップルップルさんに頑張ってもらいたい。僕もa-blog cmsに腰を据えて取り組むようになったら、何らかの貢献はしたいと思っています。