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クライアントととの関係をデザインする、ということ

デザインの過程では、クライアントの悪いところも直視しなければならない瞬間があります。どんな組織にも、どんなサービスにも、長所もあれば短所もあります。商品は良いのにサポートが悪い、アイディアはあるけど実行力がない、熱意はあるけど人材が不十分、時間はあるけどお金がない、などなど。そうした光と影の両面をわかったうえでデザインを行わなければ、アウトプットされるものは表面だけを飾り立てた脆いものになり、利用者に本質を見破られ、クライアントが思うような効果は上げられません。

クライアントにとって、自分たちの職域にいろいろとツッコミをいれるデザイナー(業界ではプロデューサーやディレクターという肩書きかもしれませんが)は、時に鬱陶しいものだと思います。誰だって弱いところは見せたくないもの。おまけにデザイナーは、クライアントの仕事に詳しくなかったりしますから、根掘り葉掘り聞かれ、そして冷静に弱点も眼前に並べられるわけですから。

だから、デザイナーとクライアントとの間には信頼関係がないといけない。デザイナーに嘘をついてコンテンツを作ってもうまくいかない。ここは腹を割って話すしかない。そう思ってもらわなければならないのです。口で言うほど実際は簡単ではありませんが。

一方で、クライアントの事情に精通しすぎて、馴れ合いの関係になってしまってもいけません。関係が近くなりすぎると、利用者の視点で分析することが難しくなったり、無理なお願いを聞かされてしまったり、といったことになりかねません。クライアントとは適度な距離感、適度な緊張感を維持していくことが大切になります。これまた難問。

以前CSS Niteでも話したことがあるのですが、ごく短期間で終わる案件1つだけでは、デザインがきちんとその役目を果たすのは難しいように思います。Webサイトは公開して終わりではなく、運用や検証、そして改善のための開発のサイクルを繰り返すものです。そしてそのサイクルの中で、デザイナーも、そしてクライアントも成長していく必要があります。だから、長く続く関係を築いていくことを意識しなければいけません。それもまた大切なデザインの対象だと僕は思っています。

そう考えると、デザインって特別なことじゃない。でも、だからこそ難しく、やりがいがある。