続・使わなくなる理由
- 2009年07月03日
前回「使わなくなる理由」というエントリーを書いたところ、cnktさんがいいコメントをつけてくれたので、返信的な感じで、続きを別エントリーにしたためます。なので、以下を読む前に前回のエントリーとコメントをご覧くださいませ。
友人のPCが超重たいのは、搭載メモリの少なさだけでなく、複合的な要因があるんじゃないかと僕も思っています。が、友人が使うアプリはブラウザとWordとExcel、たまに写真編集アプリ(デジカメに付属しているようなやつ)のみで、商用のパッケージソフトはもちろんフリーソフトもまずインストールしないという使い方です。コントロールパネルを見て「おー」と思いましたよ。メーカーの(何に使うのか不明な)プリインストールソフトしか並んでない感じでした。
そんな友人なので、意識的に同時起動させるアプリといっても、Word+Excel+IEというパターンがMAXでしょうし、話を聞く限りではアプリ単位で負荷のかかるような作業はまずしない感じです。もちろん、裏でセキュリティソフトが動いていたり、よくわからないプリインストールソフトが動いてたりするのかもしれませんが、利用スタイルとしては超ライトと言えるんじゃないでしょうか。
512MBという搭載メモリは、店頭で売られている標準セットであり、メモリとHDの違いもよくわからない友人ですから、そのまま購入したのでしょう。そして購入後2年が経過して、ビギナーなままの使い方で、Gmailでメール1本書くのに大変な時間がかかるという状況。
僕は思わず「Mac買っちゃえば?」と言ってしまいました。友人は「このアップルの回し者め!」というリアクションでした。よく誤解されるんでこの際もう一度言っておきますけど(誰に?)Macを買ってくれると僕が嬉しいというのでは全くなくて「コンピューターの購入コストを回収するどころか、使うたびにストレスを溜めてるんじゃ、あまりに悲惨じゃないか」と思うから言うんです。
僕はMacをメインで使って10年経ちます。Macの良いところも悪いところもそれなりに知っています。このケースに関して言えば、Macはプリインストールされているアプリの使いやすさという点でアドバンテージがある、と思っています。動画編集アプリであるiMovieとか、音楽ならiTunesとか(Win版もフリーでダウンロードできますけど、使い勝手はMac版の方がいいです)。可能ならあと1万円出してiWorkとMacに関する参考書(MYCOMのがオススメ)を買えば、環境としてはかなり充実したものになると思います。
WindwosにしろMacにしろ、フリーソフトをダウンロードすれば良いとか、他の商用ソフトで素晴らしいものはたくさんあるとか、もちろんそれはそうなのですが、多くのビギナーはそこまでなかなか行けない。追加出費はしたくないし、探してインストールとか難しいことはしたくないもの。だから買ってすぐスムーズにやりたいことができるというのは、誰しも最初はビギナーであると考えるなら、多くの人にとって非常に重要だと思います。
オールインワンのMacは、現在ノートが10万台、デスクトップは12万台から買えますが、メモリは2GBが標準です。僕はこの3月まで、メモリを2GB以上積んだマシンを買ったことがありませんでした。最近買ったiMacにはメモリを思い切って4GB積みましたが、これは明らかに仕事を意識してです。ブラウザを複数(SafariとFirefoxに加えParalellsでIEも)起ち上げて、iTunes聴きながらテキストエディタでコーディング、FireworksとCyberduck(FTPソフト)も起動させると、1.5GBだとちょっと重いかもという印象だったからです(同業者ならもっとメモリを食うアプリを使ってる人も多いかと思いますが)。そんなことをする人は、メモリの意味は当然わかっているし、個々の事情に合わせてチューニングするでしょう。そんな僕の感覚では「Macの標準ソフトを普通に使うなら1GBあればまぁOK、2GBなんて贅沢すぎ」です。友人がPCを買った2年前はMacOSのバージョンも今より低く、要求するメモリも低かったと思いますが、少なくともMacは、標準仕様だと不満が明らかに出るようなスペックのマシンは売っていないという印象を受けます。
Windowsマシンの販売ラインナップは詳しくないのでわかりませんが、メモリが512MBというVistaマシンは、プリインストールソフトやセキュリティソフトの常時起動、VistaのOSとしてのマシンパワーの要求度を考えると、どこか無理があるんじゃないかと思うのです。メモリだけで云々言うのは不正確かもしれませんし、CPUとかも関係あるのかもしれませんが、明らかなビギナーが買うことを考えたパッケージなのだろうかと思ってしまいます。
僕が言いたいのは「林檎を手に窓から飛び出そう」というのではなく、コンピューターはビギナーにもっと優しくあるべきではないか、ということ。これはハードウェアだけに限った話ではありません。Windows 7にしてもOSX 10.6にしても、新機能の追加ではなく前バージョンの質の向上を主とするバージョンアップだと聞きます。そんなの出すんなら、最初から10.5とかVistaとかを焦ってリリースするなよ、と言いたい。ビギナーの苦い経験は、新しい製品のリリースで取り返せるものではないんです。
iPhoneがバックグラウンドで動作するアプリを(技術的には可能だけれど)許可しない仕様にしているのは、ハードウェアのスペックに余裕がない状態でそれを許可すると、ユーザーが無闇に「iPhoneは遅い」と感じる恐れがあるからだ、という話を聞いたことがあります。ファミコンをはじめとする任天堂の開発方針に近いものがある気がしますが、その考えでいくなら、入門機こそ、アプリの複数起動ぐらい平気なものを提供すべきなんじゃないでしょうか。
「ネットブックじゃなく夢を売れ」の時も書きましたが、提供すべきなのはモノではなく夢、ユーザーエクスペリエンスでしょう?