プレゼンでの緊張との向き合い方
- 2009年10月26日
あがってしまってプレゼンがうまくいかない・・・そんな話を耳にしたので、自分なりの「緊張との向き合い方」を書いてみます。
そもそも「緊張しない・あがらない」ようにすることは、僕は不可能だと思っています。中には常にまったく緊張しないような人もいるようですが、すでに現時点で「緊張して困る」ような人は、これから先もやっぱり緊張からは逃れられない気がします。少なくとも、僕はいつか自分自身が「緊張しない人」になるなどとは到底思えません。
僕は中学と大学は演劇をやっていましたが、何度舞台に上がっても、本番前は緊張します。舞台袖で足がガタガタ震えが止まらない、ということもありました。学会発表なんかでも、自分の出番の前の発表は耳に入ってきません。自分のことで頭がいっぱいで、落ち着いていられないのです。
じゃあどうにも対処できないのか?というと、そんなことはないんです。緊張すると大事なことを忘れたり、あがってしまうと普段の話し方ができなくなったりしがちです。結果、自分がやりたいことがうまくできないわけですが、それは仕方がないことだと思います。仕方がないから、それを見越して準備をすればいいんです。
緊張のせいで自分が提供するものの質が落ちるなら、多少質が落ちても聴き手が評価してくれるプレゼンをすればいい。理想のプレゼンは100点だけど、緊張によって点が下がりそうだ、でも70点以上を取れば聴き手は喜んでくれるはず、だから80点出せれば成功だと考えよう・・・と僕は考えるようにしています。自分が好条件で何点出せるかなんて、聴き手にとっては関係のないこと。聴き手が評価してくれれば、たとえ自分の自己採点が高くなくても、それは聴き手にとって合格点のプレゼンです。
この考え方で臨む際に大切なのは、とにかく「ちゃんと準備をする」こと。プレゼンする内容の詰め、プレゼンで使う資料の作成、プレゼンでのパフォーマンスの練習に、十分に時間を割いて真剣に取り組むことです。緊張などによって20点下がるのであれば、下がっても合格点を超える質のものを用意する気持ちで準備する。例えば「ここは絶対に忘れてはいけない流れ」というものがあれば、そこだけは覚えるまで練習する。緊張で口頭説明をすっ飛ばしてしまいそうなら、スライドに最低限の必要情報をはっきり書いておく。時間が押してしまう傾向にあるなら、内容をばっさり削って時間に余裕のある構成にする・・・といったことです。上質なものを狙うというだけでなく、セーフティーネットを張っておくことも大切だと思います。
そうやって時間をかけて準備すれば、プレゼンそのものの質は当然上がりますし、緊張を含めたアクシデントをシミュレーションして手を打っておけるようになります。これがちょっとした心の余裕、やるべきことはやったぞという自信につながって、当日の緊張を和らげることにもつながると思っています。
よく「場数を踏むことが大切」だと言いますが、それは経験を積むことで「本番で緊張しなくなる」のではなく「本番でどのくらい自分が緊張してどの程度質が下がるかがわかる」ということだと僕は考えています。あと、どのくらいの準備をすればどれだけの質が出せそうかもわかってきます。もちろん何もかも事前に計算できるわけではありませんが、「何もかも今まで経験したことと全く違う」というような状況は少ないので、計算ができることは非常に大きいのです。
これは僕の実感ですが、素晴らしいプレゼンをする人はみんな、しっかりと準備に時間をかけているし、日頃からよく勉強して吸収している気がします。プレゼンをなめていないというか、いろんなことに気を配って、点数を積み上げられる部分は確実に積み上げた上で勝負をしている、という印象を受けます。だからこそ派手な失敗がない。
合格点から上を何点積めるかは、様々な細かいスキルが必要になるものですし、聴き手の心の状況など偶然に左右される部分も大きいように思います。条件の厳しい舞台では、そこを乗り越える高いレベルが必要とされるのでしょう。でも、まずは基礎体力と考えるなら、緊張の中でもやれることを詰めていく準備をすることが大切。僕はそんなふうに意識してプレゼンに臨んでいます。