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CMSがクライアントを主役にする、という意味

サイトにCMSを組み込むことで、クライアント側がコンテンツを追加・編集するための技術的なハードルは随分下がりました。ケースに合わせたCSSの準備や管理画面のカスタマイズなど、あらかじめWeb制作者側が環境を構築しておく必要はありますが、いざ運用が始まるとクライアントに作業を全てお任せできるわけです。これは、コンテンツ作りの主役がクライアントに移ったという点で、大きな変化だと僕は思っています。

コンテンツはクライアントが持っている・詳しいものなので、CMS云々にかかわらずコンテンツ作りはクライアントが主体になるのが妥当なのですが、Webをデザインしていく過程、特にローンチまではWebデザイナーと呼ばれる専門家の協力が不可欠で、ああしましょうこうしましょうという提案をWebデザイナーが行うことも多いはずです。そのときクライアントは、提案を承諾する側にいて、コンテンツ作りの主役を譲っている感覚があると思うんですよね。もっと言えば、お任せしている感じ。

僕が制作の際に気をつけていることの1つに、自分が提案しすぎないこと、というのがあります。調子に乗って提案を連発して、クライアントがそれを承諾していくと、クライアントが「任せるよー」的な感じになって、それはそれでありがたいことなんですけど、誰が主体の案件なのか曖昧になってくる気がするんです。何かを決めることに対する責任もぼんやりしてきて、後で「なぜこれをする判断に至ったんだろう」とかいうことになる。だから自分の中で「解決策としてはコレになるだろうな多分」とか思っていても、黙ったまま、クライアントに問いかけたりして考えてもらう。もちろん、僕の心の中にあるもの以上のアイディアが出てくれば素晴らしいことだし、出てこなくて時間切れになりそうになったら僕が提案すればいい。そんな「待つ」ということを意識的にやったりしています。

で、話を戻してCMSです。テンプレに写真や単語を流し込むタイプの更新であれば、流し込まれるものより枠組みがコンテンツの大きな要素だったりします。でも、ブログのように書式や内容に自由度があって、情報そのものの質や形が問われるようなものだと、それを日々作っていくクライアントが、まさにコンテンツ作りの主役。

それって良いことだと思うんですけど、主役って大変なんですよね。主役がコケるとサイト全体がコケる。プラスの結果をもたらそうと思えば、それなりの継続的な努力が必要。考えなきゃいけないこと、学ばなきゃいけないことは山のようにある。そのことを知ったクライアントが、ちょっと引いちゃうというか、私はWebの専門家じゃないし無理とか言いだしちゃったりする。ローンチまでは安心していられたけど、なんか一人になった気分なのかもしれない。

ブロガーには「そりゃそうだろ」なことかもしれませんが、普段ブログを読まない・書かない・周辺技術とかもよくわからない人にとっては、それは面白がれるタスクというより重荷になってしまうのかな、と思います。そういうクライアントを上手くフォローして、アウトプットに積極的になってもらうことも、ローンチまでを担当したWebデザイナーの仕事でしょう。なんという要求守備範囲の広さ!とか、こういうのをプロジェクトデザイナーとか呼ぶのかな?とか思いますが。

CMSを語るときって、コード書かなくて良いとか、こんなワークフローに対応しますとかいう話が多くて、それはそれで大事なことなのですが、クライアントが果たすべき役割を変えるものだからこそ、そのフォローをどうデザインしていくかも大切な視点じゃないでしょうか。