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充実の Woman's Web Fes in Takamatsu 2012

Woman's Web Fes in Takamatsu 2012 に行ってきました。高松は2月の CSS Nite inTAKAMATSU 以来2度目。個人的には「女性のための〜」というテーマに惹かれたというより、技術系の話ではなく考え方や視点についての話が聞けそうだったので参加しました。意外にそういう話って、イベントではあまり扱われてない気がします。特にWeb制作業界では。

会場入りすると「あ、厳しいダメ出しのブログの人だ」的な歓迎の挨拶を何人かからいただきました。一部界隈にはそういうイメージが定着してきているようです。パーソナルブランディング万歳!・・まぁ、ブログを読んでもらい、覚えてもらえてるというのは、本当に嬉しいことですね。ありがとうございます。

さて、今回のイベントの感想をひとことで言うと「とても真っ当な話を、とても上質なプレゼンで再確認させてくれた」という感じでしょうか。

僕はセッションのレビューを書くときに、内容だけじゃなくプレゼンの仕方についても言及することが多いです。大学でプレゼンの授業を担当してることもあってか、よく「プレゼンにコダワリがある人なんですよね」と言われるんですが、別にそうでもありません。プレゼンが上手だと人から言われたい気持ちもあまり強くないですし、スーパープレゼンと呼ばれるような番組もほとんど見たことがありません。ジョブズのキーノートだって、まともに最後まで見たことがなかったりします。プレゼンの本はよく買いますが、ノウハウを集めたいとかではなくて、授業をどう組み立てたら良いかを考える参考にしたいからです。

誰かのプレゼンを聴く目的は、そのプレゼンにダメ出しがしたいからじゃなく、その内容を味わいたいからです。考えを深めたり、意見を交換したりするために聴く。当たり前ですけどね。だからプレゼンは、語る内容をスポイルしないようなものであればいい、ぐらいに考えています。ショーを見に来ているのでなければ、プレゼン手法自体は変に目立たなくていい。

でも実際は、内容をさらに引き立てるプレゼンはおろか、いわば「スポイルしなければいい」レベルを実現するのも簡単ではありません。プレゼンの仕方がいまひとつなせいで、話の意図が見えなかったり、頭がごちゃごちゃになったり、気持ちが削がれたりすることも多いわけです。ただ、それでは聴き手も損だし、話し手も損。自分自身も含めて、そういうプレゼンを少しでも減らしたい、プレゼンをする側がもっと意識すれば減るんじゃないか、プレゼンの平均レベルが上がれば共有する時間の質も上がっていくはず・・・そう思うからこそ言いたくなっちゃうのです。もっと良くできるんじゃないかって。他人に対しても、自分に対しても。

プレゼンの仕方という観点では、今回のイベントは全セッションが非常にハイレベルでした。中でも古瀬さんと藤田さんは過去に登壇経験がないとのことでしたが、思わず「そんなわけないやろ」と突っ込みたくなるほどの堂々たるパフォーマンス。ということは、よく「プレゼンは場数だ」なんて言われたりしますが、それ以上に「いかに真摯に準備して臨めるか」なのかなぁと(まぁ、ちょっとこのお二人は特例という気はしますけども)。とにかく登壇者全員、プレゼン自体にコメントするのが失礼なほどの「プロぶり」が気持ちよかったですね。ほんと、自分のクラスの学生とかにも見せてあげたかった。

一方で内容ですが、テーマやアプローチは人それぞれでも、どれも真っ当というか王道という感じでしたね。

鍋坂理恵さんにとっての「出産や育児と仕事の両立」、岡崎理枝子さんにとっての「フリーランスとしての自分の表現の仕方」、山田恵理子さんにとっての「チームマネージメントの現在と未来」、黒野明子さんにとっての「経験を次の自分に生かしていく方法」・・などと勝手に一部を取り出してまとめちゃいますが、それらは話者が女性であるという点では「女性視点」なのかもしれませんが、本質は性別や現在のポジションに関係ないもので、誰が聞いても頷けるものだったんじゃないでしょうか。

古瀬美香さんのセッションは、ECサイトで買い物をする時の女性と男性の違い、という具体的なものでしたが、これは「女性はこう考え、男性はこう考える」的な結果だけをTipsとして考えるより、どのような点に着目してデザインに取り組むのか、古瀬さんの回答を例に考えるという性格のものだったと思います。藤田淳子さんのインフォメーションアーキテクチャ(IA)論は、IAの定義から始まって概念を現場に落とし込んでいくのではなく、現場で直面したことを整理し解決していこうとする過程でIAを再定義するという、地に足のついたリアルなものでした。お二人とも、日頃やっていること人に伝えるうえで、自身の経験と離れない形で言葉にしていることが、聴き手に「自分の文脈で考えること」を促すことにもなっていて良かったと思います。

今回は泊まりがけで参加したこともあって、登壇者といろいろと話す時間が持てました。自分自身も学会発表などで感じることですが、セッションでは限られた時間でわかりやすく伝えることに重きを置くぶん、十分に整理・言語化できていない経験や、文脈を外れて独り歩きしてもらっては困ることについては、なかなか扱えないところがあります。そのあたり含めて、深いところを登壇者に直接質問したり意見交換ができるのは、参加者の特権というところでしょうか。

今回のイベントは、女性という切り口はあるものの、特に方向性を縛るものがなかったようなので、パーソナルブランディングやチームマネージメント、デザインアプローチやワークライフバランスなど、多様な内容でした。それに加え、どれも王道的な内容でプレゼンもバッチリ。女性だけじゃなく男性にも、僕の地元の大阪でやっても、参加者に十分に満足を提供できるものじゃないかと思います。

で、そうなると欲張りな僕としては、特定のテーマに絞った、王道以外の挑戦的な要素も含んだセッションも参加してみたいと感じます。例えば、藤田さんのIA論はもっといろんな角度から考えたいし、岡崎さん、黒野さん、鍋坂さんの話は仕事観といろんな要素がリンクするだろうし。経験だけじゃなく伝えるスキルも兼ね備えたメンバーだから、それも十分現実的な試みだと思います。セッションの手法としては講演型じゃなく、パネルディスカッションの変形型とか、ワークショップとか、お茶会とか、そういう工夫も必要になるでしょうけど。登壇者が話しやすくする工夫と、参加者が発言しやすくする工夫って、まだまだいろいろ余地があると思うんですよね。

そんな、これからのこともワクワク考えられる、充実したイベントでした。関係者のみなさん、どうもおつかれさまでした&ありがとうございました。