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CSS Nite LP, Disk 7 参加記

たまには生の声を聞いて元気になりたい!ということで、東京までやってきましたよ「CSS Nite LP, Disk 7」。IAに強い興味があったというより、登壇者の人たちが豪華すぎて絶対聴かねば!だったのですが、期待通りいろいろと楽しむことができました。大阪に帰ってしばらく仕事が立て込むので、無理矢理勢いで感想をアップしちゃいます。各セッションの詳しい内容が知りたい方は、Twitterのハッシュタグ#cssnitelp7で検索するとざくざく出てくるはずです(多分)。

とりあえず各セッションについて簡単に。

長谷川 敦士さん「情報アーキテクチャの全体像 〜ワークフローとケーススタディ〜」

IAに関する基本的なところを丁寧にまとめてくださったので、最初のセッションとして自分の頭を整理するのに良かったです。「IAは愛。思いやりの心が大切」「グローバルナビはサイトの顔、ローカルナビは次にユーザーが行きたいところ」などのキーワードもわかりやすく響きました。エンタープライズ情報設計の話はもう少し突っ込んで聞きたかったな。

林 千晶さん「プロジェクトマネジメントから見たIAの大切さ」

林さんは大阪でもセッションをされたことがあるのですが、タイミング悪く聞くことができず、今回念願かなって拝聴。「既存の主要サイトのUIを分析して提案に生かす」とか「クライアントの視点に立ってドキュメントを作りこめば、それは読み捨てられる資料ではなく納品物として認識してもらえる」といったことは明日からでも実践できるエッセンスでした。あとCMSを意識してページ構成物のモジュール化を意識してるところは興味深かったです。たぶんCSSとかもモジュールを意識してるんでしょうね。ちょっと残念だったのは、実際の文書をOHCを使って見せてくれる際、操作に手間取ってバタバタしていた感があったこと。時間が限られていたので、もう少しスマートなパフォーマンスだとより強く伝わったんじゃないかなぁと。

佐藤 伸哉さん「IAの欠点〜IAの本来の目的と役目」

佐藤さんのセッションは、サイトマップやワイヤーフレームなどの用語の意味と役割をあげていく抽象度がやや高いものでしたが、僕自身がこれまでやってきたことの意味を裏付けていただけたようで一人勝手に勇気付けられてました。「ハイレベルサイトマップを作る過程で得られるものと、そのドキュメントとしての価値を分けて考え、すべきことをし不要なことをしない」とか「IAを目的にしない、目的は良いサイトを作ることで、IAはその方法のひとつ」とか、心に響く視点がいっぱい出てきました。本質を見据えて仕事をするって大事ですね(今更)。

坂本 貴史さん「IAワークショップ〜LPOをテーマに〜」

事前課題とセッション中のタスクがあり、方法論の面でも刺激の多いセッションでした。扱っている内容も実践的なもので、明日からでも使えるものだったと思います。「ページから視覚的に感じられるサイト構造と実際の階層構造が乖離しないように」というのは個人的にヒットする視点でした。ただ、タスクの指示の出し方がちょっとわかりにくかったかな、という印象も。テーブルでは「坂本さんは何をしろといっているのだろう」という反応がちらほら見えましたし、参加者のIAに対する問題意識や知識が違っているぶん用語の解釈に幅があったりで、坂本さんが意図された結果にならない部分もあったかも。僕も授業でアクティビティとかタスクを行うので、その設定の難しさ(厳密なルールを課すと発想が制限され、ゆるすぎると質が伴わない)はよくわかります。試みは本当に評価されていいはずだと思うのですが。あと、意図や認識を伝えるための書式・名称というレイヤーの問題と、何を何のためにやるの?というレイヤーの問題を混ぜて扱うのは難しいなという気がしました。もちろんこれらは不可分なのですが、参加者のIAに関する理解がまちまちの(ようにみえる)状況では、問題点のフォーカスを難しくさせる部分があったのではと。

小久保 浩大郎さん「実装視点からのボトムアップIA」

URLが思い出せないんですが、昔小久保さんのブログ記事にすごく感動したことがあって(それで小久保さんのことを知った)生でお話が聞けるということで楽しみにしてました。予想通りアカデミックな語りとアカデミックなスライドだったのですが、予告にあった「HTMLや既存の語彙を基点にした要素の拡張やクラス設計を行うことで、コントロールされた制作フローとユーザー体験を実現するWebサイト設計を考えます」という内容に具体的な例をあげて言及してほしかったのが個人的に残念だったところ。一般的な見出しは階層構造じゃなく情報の粒度という話は、たとえばDTPなんかをやってると強く実感できるもので、内容として面白いところも多かったのですが。参加者のニーズを捕まえ切れなかったのかなという感じでした。でも僕はkotarokさんのファンなので(笑)またお話聞きたいです。

長谷川 恭久さん「IAからWebサイトデザインへの突破口」

森田雄さんとともに僕がファンを公言しているヤスヒサさんのセッション。作りこまれたスライドと相当練習されていると思われるパフォーマンスは毎回素晴らしいの一言。スライドを切り替えるタイミングが見ていてわからない、一体感のある流れ。自分も見習って近づきたいと思っています。内容は、期待をいい意味で裏切ってくれるというか、ヤスヒサさんらしい感じでした。「コンテクスト」を「情報を探している人たちが情報にたどりつく流れ」とするところや「既存のUIパターンを分析し使っていくことはユーザーの言語を考えることである」」というくだりは強く同感。最後に「たくさんの正解がある中で必要なのは強いリーダーシップ」という話になったのは、僕もその意味をどう実践するかこれから考えていかねばならないなぁと思いましたね。今度は大阪にもお話に来てくださるということで、超期待してます。よろしくお願いします。

グループディスカッションは時間が押していたこともあり、あまりまとまった話ではありませんでした(それは狙いの範囲だったのかもしれませんが)。感想の代わりに、以下全体的なことを。

IAは制作者が日夜直面している領域の話であり、デザインの本質であると思います。そのため、根本的には「私はデザインをどう捉え実践しているか」の話になるんじゃないでしょうか。少なくとも僕はそう思っていたのですが、実際のセッションはほかにも、すごく基礎的な話あり、意識の低いデザイナーとのコミュニケーションの問題あり、クライアントとのコミュニケーションの問題あり、ドキュメントの書き方指南あり、という多様なものでした。多様なことは悪いわけではないのですが、限られた時間で得るものを生み出すセッションを考えると、少なくとも自分でIAについて考え、実践し、それを評価した経験を柔軟に呼び出せないと、深いところに行けず散漫に終わるのかなという感じでした。

僕もそう制作経験が多いわけではないのですが、セッションであがったキーワードや視点を自分の手がけた(手がけている)案件でどう取り扱うかを考えながら聴いてましたし、だからこそ、それが自分の中に響いたんだと思います。逆に言うと、このセミナーで語られたこと、そして十分に語られなかったことを考えるには、やっぱり少なくとも上記のような経験をし、問題意識を持ち、知識を得てそれを整理する、というプロセスが不可欠なのではと思います。あくまで僕の経験からですけど、そうしないと「ふーん」で終わってしまうんですよね。内省にも相応の準備と勉強が要るんじゃないかと思っています。

僕はセミナーでTipsの伝授を求めるのも悪いことだとは思っていません。でも、Tipsそのものを覚えれば解決することって実は少なくて、Tipsの背後にある思想や前提の理解があってこそのものではないかとは思っています。セミナーだけじゃなく、本やブログを読んで勉強し、得たものを実践し評価する、そんなプロセスが深い学びには必要だと思っています。CSS Nite Advanceというか、そういう学びのプロセスを経たことが前提のセッションも、あってもいいのかなと改めて思いました。

最後におまけ。

「堀内敬子さんのスライド、ええなぁ。」「実現しないタッグマッチ - アクセス解析とユーザビリティ」で、堀内さんに会いたい!と書き続けていたことをhiloki氏が覚えていてくれて、懇親会に参加していた堀内さんに引き合わせてくれました。何でも願い続けていればいつか叶うのですね(違)。あまりに予期せぬことだったので、自分のブログで何を書いていたか思い出せずお話ができませんでしたが、次回お会いしたときはぜひ!