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UX and UI 〜それより僕が伝えたいのは

NPO法人ウェアラブルコンピュータ研究開発機構(チームつかもと)大阪交流会、というイベントで20分ほどのセッションをしてきました。僕の担当テーマはUX。その時のスライドを公開しておきます。

体験をデザインするとは何か from Sunami Hokuto

スライドを見てもらえればわかりますが、セッションでは「体験のデザイン」を「多くのWebデザイナーはなぜUXとUIを混同するのか」という切り口でお話しました。自らの同業者叩き的なプレゼンを(しかも異業種の人相手に)するのは、あまり褒められたアプローチではないかもしれません。それでもあえてそうしたのは、なぜ混同が起きるのかを自分自身が深く考えてみたかったこと、UXという言葉のバズワード化を快く思っていない方が参加者の中にいそうだったこと、が背景にあります。

僕を知っている方からすれば「お前がなぜUXを語るのか?」というツッコミを入れたくなるかと思います。僕も自分で自分に何度もつっこみましたから。今回は、過去にブログに書いたUX関連の記事が依頼のきっかけなんだそうです。やっぱりブログを続けるのって大事ですねぇ。

勘違いされるとアレなので一応言っておきますが、僕自身はUXの専門家とかじゃないし、UX自体の定義や解釈にも大したこだわりはないです。タイトルだって、あえて「体験のデザイン」という曖昧な言葉にとどめてますしね。

でも、UXとUIを混同するような現状には、強い違和感があります。誰のためにデザインしてるの?、デザインの目的を見失ってるんじゃないの?、という疑いを持ってしまう。なので、デザインってユーザーのことを考えてすべきだよね、そのためには何をどうすることが望ましいのか常に考えていかないと、ということを改めて言えればいいなと思って引き受けました。

ただ、引き合いに出すUXについて、オレオレ理解で適当なことを言うわけにはいきません。会場に僕よりUXに詳しい人もいるかもしれませんし、語る側がひどければ業界に対する信頼を落としかねません。この数ヶ月アレコレと資料を漁って準備を進めましたが、それでもまだ不安が残るなぁ・・・ということで、TwitterのフォロアーでUXに詳しい方々にご相談させていただくべく、東京に行ったのが先日です。

この東京のご相談の会はとても有意義だったのですが、さらにありがたいことに、翌日の「IHDfes ゲーム・開発・UXD情報交換会」に急遽参加させていただくことになりました。このイベントは、IGDA Japan(ゲーム)、DevLOVE(開発)、hcdvalue(UXD)の3つのコミュニティ・団体がそれぞれプレゼンをし、その後みんなでディスカッションをして情報交換をしようというもの。どのコミュニティにも属していない僕でしたが、せっかく東京に来ているチャンスだし、UX関連でさらに学びもあるだろうということで、図々しくも輪に入れてもらいました。

結果、このイベントも予想通り非常に学びの多いものでした。特に自分にとって大きかったことが2つあって、ひとつは「ゲーム業界では昔から、体験をデザインするという意識で開発してきた」ということ。UXという言葉はあまり使われていないそうですし、体験ではなく表現という言い方をされていましたが、ゲームのプレイヤーに何を見せるか、何を感じさせるかがデザインの肝であり、そこがブレないようにするというのが大事なのだそうです。

ゼルダの伝説シリーズの開発メンバーは、判断に迷ったときは「それはゼルダらしいかどうか」を考えて決めるそうですが、この「ゼルダらしさ」は明文化されていないとのこと。ゼルダ大好きな僕は、この話自体は以前から耳にしていたのですが、改めて聞くと「まさにUXを考えてデザインしてるってことだよなー」と腑に落ちました。

ちなみに、ディスカッションのメンバーと、桝田省治さんの名著「ゲームデザイン脳」の話で盛り上がれたのも運命的なものを感じましたね。ゲームに詳しい人たちが集まる場だから可能性はあるわけですが、僕にとって今回東京での最初のミッションが、まさにこの本を友人に紹介することだったのです。まさか最後も同じ本のネタで締めることになるなんて、ほんとビックリでした。

もうひとつの学びは、僕自身が普段仕事でやっていること、教育関係者と教材開発の話をすることは、学びという体験をいかに捉え、設計し、それをサポートするものを作るかという、まさに「体験のデザイン」であったことに気づけたということ。学習者や教師のニーズを受けて、学習環境の制約を考慮し、どうやって学びを生み出していくのかを考えること。なーんだ、いつもやってることなんだから、UXとUIを混同するわけもないなぁと、随分と気が楽になりました。

こういう経験を経て、冒頭に紹介したプレゼンができあがったわけです。このプレゼン終了後の懇親会では、インターフェースやデザインワークショップの専門家の方たちとおしゃべりしたのですが、形は違えど、UXという言葉は使わなくても、みんなよく似たことを意識して実践しているのだと感じました。Web業界という限られた世界、限られたメンバーとだけ活動していては、それが実はシンプルで広い範囲に通じる考え方であることにも気づきにくい。ほんと、視野を広く持つことって大切だなぁと思いました。

ということで、今回のプレゼンはいろんなことが美しく一本の線でつながった結果だという思いが強かったため、記事を分けずに長々と書きました。いろいろとアドバイスしてくださったみなさま、本当にどうもありがとうございました。