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技術の積み上げが見せてくれた、ミニ四駆の新しい魅力

先日、某所で行われたミニ四駆大会に出場しました。そのこともあって、20年ぶりにミニ四駆についていろいろ調べて面白かったので、ミニ四駆の技術の変化についてメモしておくことにします(いつもに増して誰得記事キタコレ!)。

僕が小学生の頃(80年代後半から90年代前半)のマシンの主流セッティングは「ホイールは小径+タイヤはワイドのスポンジ」でした。タイヤの直径を小さくすることで、マシンの重心を低くすること。タイヤはワイドにすることで接地面積を増やし、グリップ力を上げること。つまり「走行を安定させること」に主眼が置かれていたわけです。

他に、コーナリング対策はワンウェイホイール、フロントは大径ローラー、リヤはハイマウントローラーというのも定番でした。ただ初期の頃はパーツがあまりなくて、大径ローラーもハイマウントローラーも他のパーツを流用して自作していましたね。一定以上の工作スキルがないと厳しい印象でした。

この「とにかく低重心で安定第一」の流れを大きく変えたのが、スタビポールではないかと思います。スタビポールとは、垂直のつっかえ棒。これをマシンの両サイドに装着して、マシンがカーブで横に倒れそうになったときに、コースの壁に棒を突っ張らせて車体を押し戻すわけです。僕は正直、このスタビポールは好きじゃないんですよね。いかにも「転倒防止のミニ四駆的なアイテム」なので。でもこのパーツの効果は絶大でした。多少オーバースピードでコーナーに突っ込んでも、無理やり姿勢制御して走りきってしまうのです。

やがてポールの上部にローラーを付けられるようになり(スタビポールローラー)みんなのマストアイテムに。サイドバンパーだけでなくフロントもリアにもポール立てまくりなマシンも目にするようになります。このスタビポールと、キットのシャーシが低重心化して安定性が増したおかげで、以前よりスピード重視のセッティングが増えたように思います。

そして最新のミニ四駆事情を調べてみると、さらにスピード重視のセッティングが広まってるんですよね。幅が狭い大径タイヤ、昔は無視されがちだったスリックタイヤもバリエーションが豊富になっていて、パレルタイヤ(中央が盛り上がっていて接地面積が小さいため抵抗が少ない)とかがあるわけですよ。そんな直線仕様のマシンで大丈夫か?と思ったのですが、購入して走らせてみて納得。シャーシが非常に低重心化していて、パーツの精度も昔と比較にならないくらいに高いので、ノーマルキットでコースを走らせても速くて安定してるんですよね。ほんとにヤバイくらい速い。20年前のマシンと比較すると、もう次元が違う作り。小径タイヤだと地を這うように走りますしね。

もちろん、モーターを速いのに変えるとコースアウトします。ただ「速度をコントロールしながら」コースアウトを防ぐパーツが充実してるんですよね。スタビポールは健在なんですけど、ローラはベアリングやアルミといった摩擦が小さく回転がスムーズなものが主流になっていて、コーナリングも安定感が出せます。高速化で負荷が気になるプラスチックのシャーシも、FRPの補強プレートで簡単に剛性を上げられるようになっています。昔はFRPの切り出し加工なんて大変すぎてやる気にならなかったんですけど、今はドライバ一本でできるんですね。

昔は、オフロードで走らせるために設計されたマシンを、いかにコースアウトさせずに走らせるか、いかに安定性を高める工夫ができるか、高度な工作技術で競っていた感がありました。でも今は、華麗にコーナを安定して曲がれる高速マシンが、丁寧に組み立てるだけで手に入る。あとはパーツの組み合わせによる「スピードと安定性の高度なバランス調整」を楽しめる状況になったのだと感じます。

もちろん、さらに上のレベルになると超改造が出てきて、初心者には埋めようのない差ができるんでしょうけど、これだけ技術が高まったおかげで、市販パーツの組み合わせで、入門からハイレベルなレースが期待できるようになった感じがします。誰もが始めやすく魅力を実感しやすい、というかね。男性だけでなく女性も、大人も子どもも、初心者も上級者も楽しめる、本当にすばらしい「おもちゃ」になったと言えるんじゃないでしょうか。それはミニ四駆という素材の良さと、20年の地道な技術の積み上げがあったからこそではないかと思うのです。

いやぁ、すごいね。おそれいりました。