withComputer

マルチポストと学会発表

質問系の掲示板とかSNSとか、複数の場所に全く同じ文面の質問を書き込むことをマルチポストと言います。ネットのモラルの一般論としては、このマルチポストは大変嫌われています。複数の掲示板やコミュニティを普段から見ている人にとっては同じ質問を何度も目にすることになりウザイ、回答が分散するので回答者たちの労力が無駄に大きくなる、回答者を「答えを早く得るための道具」として扱うような行為に感じられる、などがその理由です。ものすごくバッシングされてるのもよく見かけます。

その理屈はよくわかるんですけど、でもマルチポストしたくなる気持ちもわかるんですよね。これだけSNSなどのWebサービスの利用が一般化したいま、ユーザーが所属してる掲示板やコミュニティって、もう人によってバラバラなのが当たり前。どこに投げたらいちばん良いのかの判断は難しい気がします。

また、趣味というか好みというか、個人の興味関心も多様化してるわけで、広くみんなの意見を聞きたいなぁと思ったら、1つのところで聞くというのは難しい。ユーザー層を想像しながら選びつつも、いくつかのコミュニティで同じ質問をしたいと考えるのは自然なことでしょう。そんな「意見を聞きたい系」の質問もマルチポストとしてバッシングの対象になるのかな、どうなんだろう。

こういうの、技術的に解決できるといいですよね。ひとつのところに投げたら、それを参照する形で各媒体に広がって、回答は一元管理できてアーカイブとして保存される、みたいな仕組みで。

で、これと関連して思うのが、学会発表の規約でよく見る「発表できるのは未発表のものだけ」をどう考えるかということ。学会では、別の学会で似たような発表をすることは一般に禁止されているようです。これがマルチポストの問題とよく似ていると思うんですよね。

研究者にとって学会発表は、学会誌への投稿論文と同じく、それがキャリアの形成に必要という側面は確かにあります(実績作りのアリバイ発表と、それに対して何も言わずにお茶を濁す聴衆という学会の構図も目にするので、いろいろ言いたいことはあるんですけど)。でも僕のように、学会発表が単純にキャリアにつながるような研究者じゃないけど、みんなに何かを聞いたり、思ってることを伝えたりする発表をしたい場合だってあります。そのときに、全部が全部同じじゃないけど、コアの部分は同じ話をあちこちでしたいんですよね。学会の種類や場所によって参加者は全然違うんで。

でも、そうやってると「発表のリサイクルはいただけないですね」とか言われたりするのかな。実際まだ言われたことはないですけども。自分の感覚としては、いろんな人からいろんな意見聞きたいからやってる、客層が重なってるようだったら当然新しい内容を入れて期待に応える、だって一期一会だもん、なんですけど。

昨年とある方から「学会なんだからもっとアカデミックな話をしなさい」って言われましたけど、そういう期待を持って聞いてくれてる人もいることは理解しつつ、こうも思うんですよね。アカデミックじゃない(と言われる)話ができるオープンな場があまりない、だからここでやってみたんですよ、と。そこで得られた知見をアカデミックな形に持っていくのは得意な人たちにお願いするとして、ガチガチの研究でもなく、ルーズな飲み会での愚痴話でもなく、きちんとオープンに互いに価値を認めあって話すような場が、もっとあちこちで普通にあってほしいなぁと思うのです。

なんか最後は全然マルチポストの話じゃなくなりましたが、とにかくそういうことです(えっ。