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ガンバレ雑誌!

特集記事に興味があって購入した雑誌を、次号以降も本屋で手に取るかどうかは、その本の特集記事ではなく連載記事にかかっているんじゃないかと思います。そしてもっと言えば、ひとつふたつの面白い連載記事ではなく、連載記事全体と特集とを含めて感じられる雑誌の雰囲気が、次号も見てみようかなという気にさせるのではないかと思います。

数年前からRSSリーダーを使うようになり、ブログごとの定期購読が日常化しました。iPhoneを買ってからは、Twitterのポストから記事単位でさっと参照することも増えました。そうした記事を読むときは、まずさーっと前半部分に目を通して、読むか読まないか、流し読みかじっくり読みか決めるというパターンが多いです。RSSリーダーの場合は未読消化という目標もありますし、Twitterの場合は読んでるうちにタイムラインが変化していくわけで、スピード優先で情報を得ていくという意識が高いです。レイアウトなんかも読むのに邪魔でなければいい。サッと読んで、次。気になるものはブックマークなり、ふぁぼっておくなりする。

一方で雑誌はどうか。少なくとも僕は、雑誌の記事は頭から一定のスピードで読んでいきます。速すぎず遅すぎず。あまり焦ったりしない。レイアウトや図版は、読みやすさと視覚的楽しさを求めます。そこには情報収集のスピードよりも、読んでいくことの楽しさ、読んでいる時間の充実が大切だと思っています。

面白い連載がいくつあるか?それぞれの連載にいくら出せるか?なんて観点で雑誌を評価したら、1,000円以上の雑誌を定期購読するのは高すぎると感じます。連載は毎月面白いとは限らないし、つまらない特集で紙面の大半が割かれてガッカリということもあります。でも、それでも大抵は次号も手に取るのはなぜか。雑誌を読んで過ごすというその時間全体に対して、面白い記事があるかもしれないという期待に対して、僕はお金を払っているような気がします。

今だから必要な情報、読めばすぐその役目を終えるような情報と、ネットは非常に相性がいいと感じます。速報性に優れているし、クリック1つで手に入れられます。iPhoneのようなモバイルデバイスがあれば、場所も時間も選びません。さらなる情報を検索するのも簡単。記事単位、コンテンツ単位で取り扱える手軽さがあります。

だからこそ、雑誌はそういう情報で勝負しても仕方がないと思うんですよね。その土俵じゃ、逆立ちしたって勝てない。紙の上、紙の束という固定した場所だからこそ追求できる表現をすればいいし、いくつかの情報をまとめること、情報を時間をかけて再編集することに良さを出せばいいと思うのです。

僕が思う良い雑誌ってそこに意志を感じるし、その意志に感じるものがあるから次号も手に取ろうかなと思うのですが、最近どんどんそういう雑誌が減ってきているような気がします。てんでバラバラな連載群、なにがしたいのか分からないインタビュー記事、誤植だらけかつ意味の通らない文章。誌面レイアウトも、なんかほんとにテキトーに原稿流し込んだだけというか、そう作れるようにできてるというか。トータルで、雑誌を買う喜びが感じられない、雑誌の読者であることに誇りが持てないんです。

そんな適当な雑誌なら、記事単位でバラバラにしてネットに流せばいい。たぶん個々の記事レベルになったら、ますますコンテンツの魅力がなくなると思うんですよね。逆に言えば、ネットに流れる情報と同じレベルのものをただ集めたって、お金を払ってもらえる雑誌にはならない。ネットが十分に使えない人には需要があるかもしれないけれど、それでは市場は先細るだけじゃないでしょうか。

そう言えば、先日始まったNHKの朝ドラも、担当雑誌の廃刊によって出版社をクビになった主人公の話だったような。不況もあって雑誌が売れない、予算は削減されるというのはわかります。でも、みんなに「雑誌なんて価値がない」と本当に思われてしまったら、永遠に雑誌は復活できません。雑誌編集者には、もっと奮起してもらって、雑誌っていいなって思えるものを作ってもらいたいです。