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CMSを考えるということ:CSS Nite in KANSAI, LP1に参加して

CSS Nite in KANSAI, LP1 〜CMS POWER USER'S SUMMIT 2010〜に参加してきました。全体として、なかなか良かったんじゃないかと思います。テーマがちょっと難しい要素を持っていた(これについては後述)と思うのですが、運営側の「楽しく良いセッションにしていこう」という気持ちが伝わってきました。そういうのって大事ですからね。関係者のみなさん、本当にお疲れさまでした。

僕はセミナーで得られるものは「知識」ではなく「人のエネルギー」だと思っています。今回のゲスト、特にcremaさんこと黒野明子さんは、僕の中ではMTの良質な本を書いているハイパー制作者なので、直にお話が聞けて良かったです。普段のディレクションもスマートにされてるんだろうな、とか想像してました。藤井正明さんとはTwitterなどで普段からやり取りがあるのですが、期待通りの慣れたプレゼン。勝又孝幸さんもスライドの作り込みと要点のつかみ方がしっかりしていて、デキるディレクターさんなんだろうなと感じました。この3人と比べると、WP担当の太田樹さんは、ちょっと残念なプレゼンテーションだったかな。スライドの準備とか、セミナー全体を盛り上げる演出とか、もうちょっと頑張ってほしかったです。プレゼンテーションの魅力が製品の魅力と直結する場なので、もったいないなぁって思うんですよね。

さて、ここからが本題。今回思ったのは「CMSを考えるって、つまりどういうことなんだろう?」ということです。

今回の4つのCMS、どれも一応さわったことがあります。a-blog cmsとMTは春公開の案件で使っていますし、このブログの前バージョンはWPで構築してました。SOY CMSはローカル環境に入れてぼちぼちテストしている状態です。でもそういう人って結構少ないんですよね。それどころか、CMS自体ほとんど使ったことがないっていう制作者もそれなりにいるのでは?という話も懇親会で聞いたりして、結構驚いています。

僕がCMSをあれこれ使ってみている理由は、自分が手がける案件にCMSが必要なことが多いからです。クライアントが自分で更新できるようにする、定型的なコンテンツが相当数あってCSVからインポートする必要がある、検索UIや関連要素の自動表示などが重要な要素、などが具体的なところ。でも僕にはフルスクラッチでシステムを組み上げるスキルはない。となれば、それができる人にお願いするか、CMSを導入して実現するしかないわけです。予算やネットワークの充実度を考えると、使えるCMSを持っておくことは僕にとっては死活問題。

そういう僕と、CMSってあまり使ったことないっていう人が、同じセミナーに参加してともに満足っていうのは難しいですよね。今回は、アップルストアでプレセッションが2回ほどあったことを考えると、各CMSの基本的なところは理解してる状態で参加してほしいという主催者側の思いがあったのだと思います。そのプレセッションに参加してないので人の入りはわかりませんが、会場の雰囲気を見てると、CMSをよく知らない人たちもそれなりにいたのかな、と。そして、そういう人たちにもわかるように、出演者も基礎的なことをフォローして話してた部分もあったと思いますが、それが逆に、限られた時間で各CMSの違いを浮き彫りにすることを難しくしたように感じました。

誤解を恐れずに言えば、4つのCMSの相違はそう大きくないんです。記事単位のデータベース、ブロックタグを記述したテンプレート、管理画面からの各種設定。超特殊な構造をしてるCMSが混じっているわけじゃない。機能的にも、プラグインや関連アプリを含めれば、極端に実装・未実装の差があるわけじゃないんですよね。だから、セミナーで取り上げられた4つの事例は、このCMSではどうしようも対応できません、という話にはなかなかならないわけです。ざっくりとした実現で良いのであれば。

そう、各CMSの違いが取り沙汰される場合というのは、実現できるけど手間がかかる、お金がかかる、専門知識が必要、細かいカスタマイズができない、というレベルでの話。細かいレベルだけれど、クライアントの要望にしっかりと応えつつ、制作の効率化を図るには外せないもの。つまり聴き手が、これを細かいレベルだと捉えるのか、それこそが肝と捉えるのかによって、このセミナーに期待する内容というのは大きく異なってくるのだと思うのです。

例えば、カスタムフィールドはどのCMSも実装できます。でも僕のようにプログラムが専門でない人には、検索用のUIを柔軟に作れるという点ではa-blog cmsが1番です。これがPHPを書けるというならWPやSOY CMSが良いかもしれない。またMTタグを組むスキルとプラグインが得意ならMTだってありうるわけです。結局のところ判断は、その機能が当該案件の中でどの程度重要なのか、それ以外の要素も含めた全体としての扱いやすさ、ライセンス料を含めたコストなども加味して行われるわけで、かなりマニアックな話になるんですよね。僕はそういうマニアックな話も聞きたいですし、それなら今回の事例のような「さっくりとした案件概要」じゃなく「実装フローまで踏み込んだCMSの特徴比較」を軸に話を展開していった方がいいとも考えられます。

このレベルで仕事を考えると、MTかそれ以外か、MTの代替CMSは?というアプローチだけでなく、様々なCMSを賢く使い分けることも重要になるのではないでしょうか。制作者から学習コストという悲鳴が聞こえてきそうですが、クライアントの要望に徹底して応えるとなると、そういう苦労は付き物じゃないでしょうかね。そういうスタンスの人が喜ぶ情報って、ネットにもなかなかないので、セミナーでやったら価値はあるかなと思ったりします。

一方で、その細かな違いを意識できる状況にない聴き手には、今回のセミナーはよくわからない感じだったと思います。もっとも、僕はそういう人に「まずMTをやってみてよ」と言いたい。どれか1つでもCMSを使い込んで基礎を理解して、ということです。なぜMTを例に挙げるかというと、MTは本やネットやセミナーで流通してる情報量が圧倒的に多いから。他のCMSも、最初の選択に名乗りを上げるためには、やっぱりMTなみに情報が流通しないと厳しいでしょう。それは大変なことだと思いますが、2番手、つまりMTでは満足できないあなたに、というアプローチもあるので、どちらにしろMTは無視して得なことはない気がします。

どうせ全ての聴衆に合格点を出してもらう話などできません。セミナーはターゲットを絞って、その人たちの期待に応える質を目指すべきです。その点では、もちろん動員=収益的なこともあるのですが、誰にどういう情報を届けるのかがぼけてしまった感はありました。なかなか難しいことですけどね。

あと付け加えるなら、出演のパワーユーザーはCMSに対してどんなスタンスで臨むべきだったのか、という設定にも中途半端さがあった気がしました。ユーザーなんだから、自分の知っているCMSに対して感じることをぶっちゃけで話してほしいなと思うんですよね。良いところも悪いところも。とはいえ開発元も聴衆にいるんで、なかなかそうもいかない。でも聴衆の質問は細かで実務的な比較でしたから、やっぱり一定数の人たちはそこに焦点を当ててほしかったのではないでしょうか。

最後にcremaさんが「他のCMSのことを学べて良かった」というコメントをされてましたが、あれは象徴的な感じがしました。ゲストの4人も、他のCMSのことを必ずしも詳しく知っているわけではない。となると、それぞれが担当CMSの話で張り合う構図より、情報交換をしながら他のCMSとの比較で理解を深めていくような場にするほうが良かった、という気もします。例えば「僕はずっとSOY CMSを使ってるけど、今の話だとWPのそういう機能は案件によっては効くなぁ」とか。思い入れを持ちつつも相手をリスペクトし、聴衆も巻き込んでフラットに情報を仕入れていくような感じ。もし、対決姿勢を明確にするなら、各CMSの開発元の人が出てきたほうがわかりやすいと思うんです。和やかな場になるかは微妙ですが(笑)。

勝又さんが、a-blog cmsにSNSの機能がないという話題で「何でも1つのCMSで解決するのではなく、適切なソリューションを選択し提案する」という趣旨のコメントをされていました。それは制作者としてのプロフェッショナルなディレクションだと思います。そんな質の高い話を、もっとみんなでやっていけるといいなぁと思いました。今回のセミナーとはズレるかもしれませんけど。

とにもかくにも、いろんなことを考えさせられた良い時間でした。みなさんどうもありがとう!