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長谷川恭久さんのポッドキャストに出演しました

長谷川恭久さんのポッドキャスト「Automagic」の第41回(2012年4月26日配信分)に対談という形で出演させていただきました。世間的にはゴールデンウィーク。いつもより時間の余裕があるという方は(&別にそんなことないよ!という方も)ぜひ聴いていただけると嬉しいです。

Automagic #41(MP3ファイルへのリンクです)

対談のテーマをひとことで言うと「考えること・ディスカッションすること」になるでしょうか。このテーマ、対談前に特にしっかりと決めたわけでもなく、この対談の実現のきっかけとなったイベント(まにフェス)の休憩所での長話の再現でもありません。ブログを書いたり人前で話したりするなかで実感すること、デザインのプロセスが持つ「正解のない問い」への取り組み方の模索、意見を言うこととソーシャルメディアの反応など、長谷川さんと僕とに共通する点がいくつかあって、それが自然とこういうテーマにまとまっていったのかなと。

長谷川さんのブログ「could」は14年になるそうですが、僕も自分のサイトを持ったころから文章をアップしていたので、そこまで含めると12年書き続けていることになります。対談の中でも「なぜ書くのか」という問いが出てきますが、いくつか理由はあるものの、僕の場合「自分の出せるコンテンツが文章しかない」というのが大きいです。目を見張るようなグラフィックや、心躍らせる音楽や、世界を変えるようなコードを生み出す力はないし、またそれを是が非でも得たいという強い願望もありません。書くことでコミュニケーションをする、そのためには考える姿勢がないといけないし、考えを整理し伝える言葉を持たないといけない。それしかできないけれど、それは自分の性に合っているのかなと今は思っています。

ブログを書いたらいいよ、とは常々まわりに言っているのですが、多くの人は書く(あるいは書き続ける)には至りません。書くのは面倒です。それは僕も実感します。人に見せる文章だと思うと「適当なことは書けない」と考えてしまうのでなおさらです。何時間もキーボードを叩いて結局公開しなかった文章も山とあります。それでも僕は「仕事を後回しにしてでも書く」いや「ブログを書くのは仕事」ぐらいに思っています。

なぜか。それは「書くには考える時間が必要だし、考えなくてもできる仕事は価値を失うのが速いから」です。

Web制作では、使えるものは効率的に再利用し、さらに自動化することの重要もよく言われます。昔は限られた技術者や専門家がコストをかけてやっていたものが、いまや誰でも簡単に、しかもそれなりのレベルのものを得られる、という例はいくつもあります。HTMLやCSSのベターなコードは、誰かが編み出した途端に世界中で共有されます。多くの人が必要とするような汎用的な機能は、CMSやライブラリやプラグインになっています。便利なスターターキットとWebサービスを使えば、それこそ中身がほとんどわからなくても高度なサイトを構築できる時代です。

もちろん、どんな時代も先端の技術には高い価値がありますが、それをリアルタイムで追い求められるスキルと意欲を持つ人は多くありません。少なくとも僕はできないので、多少なりとも先人が扱いやすく整理してくれたものに乗っかることになります。が、そうした段階になると、その技術の価値は実現コストとのバランス抜きには語れません。多くの人ができるであろうことには高い付加価値は付かないのだから、限られた時間をそこに投じていくのは賢いとは言えないでしょう。

ならば「汎用パッケージになりにくく、自動化もされにくいけれど、高い付加価値がありそうなもの」に優先して取り組みたい。僕がディレクションや(広義の)デザイン、コミュニケーションのような抽象度の高い話をしたがるのは、そういう背景があります。どんな現場にも共通して存在していて、答えも多様だけれど、一筋縄では解決しないプロセスも重要なもの。それらに取り組むには「考える」というプロセスが不可欠。考えるためには、時間の余裕と心の余裕がいる。だからこれは「仕事」として優先して取り組むべきもの、というわけです。もちろん、そういう分野を自分が面白いと思えるから、というのも大きいですけどね。

上述のポッドキャストでは、僕自身がそのことをどう捉えているかだけでなく、みんなとどう取り組んでいきたいかについても語っている(つもり)です。そのあたりを楽しんで聴いていただければと思いますし、ご意見やご感想をFacebookやTwitter(@shokuto)、あるいはGmailアカウント(shokuto)へのメールなんかでお伝えいただけると、とても嬉しいです。