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評価から逃げないで

この一ヶ月くらいブログを書かずにいたので、リハビリがてら、巷の話題にツッコミを入れる記事から再開。

「奈良市公式サイトのパンくずが斜め上を行くヤバさな件 | Seamonkey-Director」

複数のカテゴリーに含めたいコンテンツが多いと、コンテンツを階層型(ツリー型)で整理するのは難しい。そして階層型のナビゲーションがメインだと、重要なコンテンツが階層の深い場所に置かれてしまうので、たどり着くまでが大変になる。コンテンツが多いとカテゴリー名も抽象的で曖昧なものになりがちだから、望むコンテンツがどのツリーに含まれるのか分かりにくくなる。結果、迷ってイライラすることが増える。だからショートカット的な形で、重要なコンテンツへの経路を手短にまとめたページを作ることになる。そうやって作られた様々な階層構造や経路を「パンくずナビゲーション」として提供すると、このサイトのようになってしまう(これは極端な例だけども)。

経験上、大学のサイトとかを制作するときも、似たような問題が起こることが多い気がした。コンテンツの整理の仕方としては担当部署ごとが(少なくとも大学側の人にとっては)わかりやすいんだけど、サイトの利用者(受験生とか在学生とか大学を訪問する人とか)には、そんな内部事情による分類ルールには馴染みがない。そこは大学側も(説明すればわかる人は)わかっているので、たとえば受験生用のショートカット経路のリンク集を作る。でも、大学関係者は各々が自分の推したいコンテンツをそこに載せたがるから、そのリンクが何十個とかになって、わけのわからないナビゲーションになる。

関係者がしっかり相談して、ターゲットやコンテンツの優先順位を決め、分類やナビゲーションの方針を定めること。それが制作段階では大事なことだと思うけど、もっと大事なことは「できあがったものをきちんと評価すること」じゃないかな。市役所のサイトは市民に、大学のサイトは大学生や高校生に使ってもらい、評価してもらう。

他人が作ったものを「使いにくい、全然ダメだ」と酷評するのは簡単でも、自分たちがそれなりの時間をかけて取り組んだものを他人に酷評されるのは辛い。思わしくない結果が出そうなことは敬遠し、責任は曖昧なままにしておきたい。そういう気持ちが根底にあるから、たいして現状分析をせずにリニューアルを行おうとするし、リニューアル後の評価作業を積極的に行わないんじゃないか。

市役所のサイトが市民に不評だと、あるいは大学のサイトが学生などから不評だと、組織としていったいどんな不利益があるのか。また逆に好評だと、どんな利益があるのか。そこを関係者の中で明らかにしておかないと、制作の何もかもが関係者の気分に左右されてしまう。そんな「Web以前の問題」が、この事例には感じられるなぁと思うのです。