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日本語教育は出発点にすぎない

週末は日本語教育学会の春季大会@立教大に参加していました。分科会で20分ほどの発表枠だったのですが、今回は共同研究者のひとりが全部しゃべる形。なので、発表準備として打ち合わせはみっちり重ねたものの、当日は客席で見てるだけで気楽な感じでした。

今回の個人的なミッションとしては、学会参加者に「プレゼンに関する電子書籍を書いた」と紹介すること。で、どんな本なのか概要を話すと「それって大学のキャリア関係の担当者にもいいかもね」という声をいくつもいただきました。そうなのですよ。こうやって日本語教育学会で話題に出してますが、日本語教師向けとは限らない(というかモロに一般向け)ですし、プレゼンスキルといっても表面的なテクニック解説じゃなく、本質的・基礎的な部分のトレーニングのための本なので。

日本語教師というのは、決して「日本語という言語だけを教えればそれで良い」ものではなく、日本語教師の持つ(べき)スキルは、日本語教育以外の現場でも十分に価値のあるものです。ただ、前者は業界関係者には常識と言っていいかもしれませんが、後者については、当の日本語教師ですら十分に自覚できていないこともあって、仕事として形になっているケースはごく少数でしょう。

僕自身の話でいえば、大学で日本語教育を学ぶなかで「あー、こういう視点やスキルって、日本語学習者が対象じゃなくても重要なことだよな」とか「コミュニケーションデザイン全般に言えることだよな」ということを感じてきました。大学院を出て活動領域を広げてからも、デザインアプローチとかキャリアデザインの話題において、自分が日本語教育で学んだこと、感じたことと同じようなことが扱われているのにたびたび気づかされます。

出発点が日本語教育でも、その知見は他の様々な領域で生かせる。そのことがわかったら、あとは生かせるように行動していく、他からの知見を自信を持って示していく。それが大事なわけですが、根っこは同じでも業界は別。自分とは違う業界とどう接触し、自分の存在と価値を提示し、気づいてもらい、仲間に入れてもらうのか。

先のプレゼン本にしても、具体的に自分は何ができるのか、どんな切り口で世の中を見ているのかを、まずは世に示そうと思ってやったことなんですよね。だから、とにかく多くの人に見てもらうことが優先。流通先であるAmazonの制約がなかったら、ほんとは無料でもいいくらい。

でも、電子書籍をただ出しただけでは全然広がらない。相手の状況と受け取り方に合わせて、別のパッケージ化もしていかなきゃならない。学会発表をするとか、ワークショップをするとか、ブログに書くとか、小さくても接点を増やしていくことで、効果を高めていきたいところ。

また日本語教育が出発点に過ぎないように、この「プレゼンとコミュニケーションのスキル」という切り口も、べつにそれだけにこだわりたいわけではないのです。だから他のことも並行して考えないと、という・・。こういうのって、ずっと継続して取り組むべきことではあるものの、アウトプットの連続だけを悠長にやっていくわけにもいかないので、中長期的にはどうするか。なかなか悩みは尽きないです。