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学びをデザインするのは誰か

学習アプリとか電子書籍とかのプレゼンを聴いていてよく思うのが「それが学習のどんな場面でどう使われるのか、その具体的なイメージが作り手の側から語られることが少ない」ということだ。最近は「利用者のログが取れます」というアピールも増えてきて、Excelにまとめられたデータを見せてくれたりするのだけれど、そのログにどんな価値があるのか?という点まで踏み込んだ話は語られない。

たぶん、語らないというより、語れるようなイメージを持ち合わせていない、ということなんだと思う。

僕もWebベースの教材を作り続けてきた経験があるので、ざっくりGoogle Analyticsを使った利用実態の分析などの話は教育関係者にするし、どういうログが分析する意味を持つかなども日頃考えたりする。先日のPCカンファレンスのポスターセッションでも、電子書籍型の教科書を前にいろいろ話をした。それ単体で学習する時と、紙の教材なんかと併用する場合では、その使い方はずいぶん違う。だからログの分析もそこらへん考慮しないといけないんじゃないの、みたいなことをつらつらと。相手は「この場でそういう反応が返ってくるとは思わなかった」みたいなリアクションだったけど。

開発者は教育の素人なんだから使い方まで語るのは無理がある、というのはそうかもしれない。でも、PCカンファレンスに来るような日頃アンテナを張ってる教師ですら、新しいプロダクトを見て「これは教育現場に活用できそう」とアイディアを即座に膨らませることができる人は、どうもそんなにいない感じがする。特にWebが絡んでくると「私そのへん全然わかんないんで・・」という人は多い。つまり、教育への活かし方を教師に考えてもらうのは限界がある、というのが現実じゃないかということ。

それならば、開発者の側が教育を学んで、積極的に提案していくしかない。とんちんかんな提案をするのは逆効果なので、現場教師と組んで実践研究を重ねるのがいいと思う。手間のかかることだけど、それがきちんとできれば競争力のあるプロダクトが作れるはず。実際にやってるところもあるけど、そういうところは話に説得力があるし、聴いていて面白い。まぁ僕自身がやってることも、それに近いものではあるけれど。

それと同時に、教師も、もっと教育への活用アイディアを膨らませられるよう、自分をアップデートしていかなければならないと思う。言われた通りのことをやるだけならロボットと同じだし、教育用ロボットの登場を待たずして、優れた教育系のWebサービスに取って代わられるのがオチだと思う。実際その流れは確実に起こってきているし、学習者の立場からすれば悪いことではないのだから、僕もそれをある程度は後押しする立場を取っている。

教育関係者は、ITに振り回されることなく、教育の本質的なことを考えないといけない。僕はそう言いたくてPCカンファレンスに参加するようになり、もう10数年が過ぎてしまったけど、状況はそれほど変わってないなぁと思う。残念でならない。

そしてその一方で、教師よりも教育の本質的なところを捉えている人たちの活動が、Webによって以前よりも可視化されてきている印象がある。世の中を変えるのは、案外こういう「教育業界の外にいる人たち」なのかもしれない。いいぞもっとやれ。

こういうこと、現場の教師はどう思っているのか。いろんな人と話してみたい。