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Keynoteの使いどころなど

僕はプレゼンのスライド作りにはKeynoteを使っています。PowerPointよりも美しいプレゼンができる、などと紹介されるKeynoteですが、それはMacのフォント表示が(Windowsのそれに比べて)きれいという部分が大きい気がします。つまりKeynote関係ないっていう。

トランジション(スライド切り替えのアニメーション)やアニメーション(オブジェクトを動かす設定)は確かにPowerPointよりスマートに調整できますが、実際に上手に使えている人は多くはないという印象を持っています。全部のスライドに派手なトランジションを使ってしまうと、最初はインパクトがありますが、聴き手もだんだん見慣れて効果はなくなるし、スライド遷移のもたつきに鬱陶しさすら感じるようになります。思考の邪魔にもなるのでお勧めしません。

個人的には、ほとんどのページのトランジションは何も設定しない、あるいはディゾルブを控えめに使うくらいで十分だと思っています。それで、話が大きく変わるときだけ、ちょっとダイナミックなのをさりげなく使う。そうすることで、聴き手に「ここから話が変わるんだな」という印象を持ってもらえます。舞台でいうと場面転換みたいな感じで、ちょっと一息ついてもらうというわけです。

と、トランジションについて語ってみたものの、僕はKeynote書類をPDFに書き出して当日はAcrobatでプレゼン、ということも結構あります。当然トランジションとかアニメーションは一切なし。なんでKeynoteでそのままやらないのかというと、プレゼンの環境上難しいことも多いからです。CSS Niteのような大規模なイベントなら、立派なホール、大きなスクリーン、スキルを持ったスタッフがいるので、Keynoteの美しいスライドをグリグリ動かしてジョブズ風プレゼンをすることも問題はないでしょうが、学会の分科会などは小さな普通教室がプレゼンの場です。スクリーンは小さく暗く色味もおかしい、部屋も適切な暗さにできない、自分のマシンを持ち込んで使えない、持ち込んだMacで出力トラブルが起きてもスタッフでは対応ができない、ということが多々あります。そういときは、PDFをUSBメモリに入れておいて備え付けの端末でやる、という選択肢があることが安心なわけです。Acrobatが入っていないPCというのはまずないですし。PowerPointはバージョン違いやフォントの問題が起きやすいですが、PDFなら余程のことがない限り大丈夫です。そういうことを総合的に考えると、美しいけれどリスクもあるスライドを一生懸命準備するより、スライドに悩まされずに内容の詰めや練習に時間を割けるやり方の方がいいな、と判断することも多いわけです。

まぁ僕の場合はやや極端かもしれませんが、貸会議室での小規模な勉強会などでプレゼンをする人など、もっと環境のことを考えてスライドを作ったほうがいいのに、と思うことは多いです。事前に会場の状態を調べない(調べるのが難しい、そこまでするのは面倒など含む)のなら、思ったより環境が悪い場合でも問題なくできるようなスライドを作るか、早めに会場入りし映りを確認して修正できるようにしたほうがいいと思うのですよね。字が小さすぎる、背景色と文字色のコントラストが弱い、ネットにつながらないと全く説明できない・・すみませんすみません、そんな場面にはわりとよく出会います。心がけ次第で回避できる部分もあっただろうに、もったいないです。

ビジュアルデザインに自信がある人や、ジョブズ風(プレゼンテーションzen風)のプレゼンをする人などは、アプリのテーマ機能をあまり使わず、スライドごとに自由にテキストを配置する方法を取ることが多いと思います。この方法だとレイアウトの自由度は上がるかわりに、文字サイズや文字色をまとめて変えたりできないので、スライドの枚数が多いと修正に手間がかかります。経験を積んである程度のリスクマネージメントができるまでは、テーマ機能をうまく使って作り込んでいくのがいいんじゃないでしょうか。

ということで、Keynoteを使うかPowerPointを使うかの前に考えることもあるよ、という話でした。僕はアプリの操作感はKeynoteの方が好みなので今後も使うと思いますけどね。