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電子書籍の作成から販売までの流れ(テキスト主体の本の場合)

先日、プレゼンを学びたい人のための電子書籍「プレゼンのプ 基礎から学ぶプレゼンテーション」の販売を開始したのですが、あんなのでいいんだったらオレも電子書籍出したい!という人もいるかと思います。そういう人のために、販売までの僕の作業メモ的なものを記事にしておきます。

前置き

今回出版した僕の電子書籍は、図版が一切なく(画像は表紙のみ)、凝ったレイアウトも一切ない(見出しが三種類と、一部段落に囲みがあるだけ)、横書きの表示というベーシックなものです。なので、いろいろ凝ったことがしたい人には、以下に書かれていない問題に直面することもあるでしょう。シンプルに電子書籍を販売するには、みたいな一例として理解していただけたらと思います。

僕の場合は、最初にパブーで販売を開始し、KoboストアKindleストアにはパブーを経由して販売することにしました。パブーにはそういう機能があるんです。最初はまずKindleストアに自分で出そうかなと思ったのですが、手続きが何やら大変そうだったのが理由のひとつ。パブーならKindleとKoboへの配本を代行してくれるので楽だなぁと。もうひとつの理由は、何人かの友人から「ePubだと読む端末がないから困る。紙の本がベストだが、無理ならせめてPDFにしてくれ」と言われていたから。じゃあ、ePubとPDFをセットで販売できるパブーで出すことにしようと。

ちなみに値段は100円にしていますが、これは100円以上じゃないと、パブーからKindleストアに配本できないと書かれていたからです。Kindleストアで売るときの値付けはいろいろ戦略があるようなので、Kindleストアでまず売りたいという人は情報を検索して集めるといいですよ。

原稿を書いてとりあえずePub化

さて、前置きが長くなりましたが、ここから作業メモです。

まず、原稿を書きます。ひたすら書きます。僕の場合、Bywordでガガッと書きました。形式はマークダウンですね。まとまった量を読み返したいときは、Markedを使いました。まぁツールは何でもいいでしょう。

原稿が書けたら、とりあえずePub形式に変換してみます。変換には「でんでんコンバーター」を使いました。これは素材をアップしたらePub形式にしてくれる便利なツールです。なお、同種のツールは他にもありますし、パブーで書いていったり、livedoorブログを使ったりして作ることもできます。一度調べてみてください。

でんでんコンバーターを使う場合、テキストは「でんでんマークダウン」という形式じゃないとダメなのですが、ほとんど一般的なマークダウンと同じです(改ページは独自形式なので、そこだけ注意)。表紙画像は、サイズのアドバイスがある(幅1562px、高さ2500px)ので、それで作っておきます。画像とテキストができたらePub化します。

ePubができたら実機確認。僕はDropboxに入れて初代iPadのiBooksで開いてみました。見出しの文字サイズが結構大きいのと、目次がiBooks用レイアウト以外にページとして生成される(でんでんコンバーターを使う際に生成するかどうかを選べます)のが蛇足な感じ以外は、概ね満足でした。電子書籍を使って校正もやってみました。問題の箇所にメモを付ける感じで。けっこうやれます。

データの再編集

次は、表示が気に入らない箇所の修正をします。ePubファイルは、HTMLやCSSや画像をZipファイルにしたものなので、解凍アプリを使ってフォルダに戻します。僕が使ったのはThe Unarchiver

解凍すると、改ページごとに別ファイルになった本文と目次のXHTML、本文用と目次用のCSS、あと画像とか設定ファイル系が入っているのがわかります。これならWeb制作者などはカスタマイズの当たりはつけられるでしょう。

CSSはMinifyされてるので、SASSIENCEを使って読みやすく整形。文字コードの記述が消えちゃう?のでそこは確認して追記。見出しのフォントサイズをいじります。あと僕の場合、本文中の一部段落は線で囲みたかったので、本文のXHTMLにクラスを指定して、CSSに記述を追加しました。

途中で「これでどんなもんかなー」ってプレビューしたいときは、Chromeの機能拡張「Readium」を使いました。これは普段デスクトップ上で電子書籍を見るのに使うんですが、Zip圧縮前のフォルダを指定すればePubの形で確認することもできます。便利。

目次ページが重複する問題は、どうしようか悩みました。正直このファイルを取り去っても、いろんな端末で問題(目次が表示されないとか)が発生しないのか、確信が持てません。なので残すことにしました。また、本文から見出しを自動的に拾ってol要素で記述してくれていたので、h3要素とかまで目次に入っており、目次が詳細になりすぎていました。そこでh3要素だけは手動で消しました。

再度ePub化して公開へ

これで修正は終わり。CSSをMinifyして、ファイル一式をTerminalでZip圧縮します。その方法については、境祐司さんらが書かれた「EPUB 3 スタンダード・デザインガイド」を参考にしました。読みやすくまとまってるのでオススメです。できあがったものを再度iPadのiBooksで確認。変更は反映されているようでした。

あとはパブーにePubをアップするわけです(ePubのアップは有料プランのみの機能)が、僕はPDFでも併売したい。でもパブー側ではePubからPDFに自動変換してくれないので、手動でPDF版のファイルをアップする必要があります。

で、ePub→PDF変換ですが、これが手軽にできるツールが見つからない。逆は結構あるんですけどね。やっと見つけたオンラインサービス「ブログ出版局」(これは電子書籍公開サービス?)を使ってPDF化されたものをダウンロードし、アップしたファイルはサーバーから削除。中身を確認します。

ちなみにこの方法だと、ちょっと表紙の残念な余白になるので、表紙だけは別に作り直した方がよさそうです。あと、無理にePubからPDFにするんじゃなくて、PagesとかWordとかでファイルを別に作って、そっちからPDFにする方がコントロールができていいかもしれません。このへん、パブーにアップしたあとの処理がどうなってるのか、よく検証しないまま勢いで出してしまった感があります・・。

PDF版もパブーにアップしたら、試し読みのページ指定をしたり、値段を設定したりすれば、これでもう販売開始となります。審査などがないので、何かあっけない感じはありますね。

宣伝とか

パブーの管理画面から、KoboストアとKindleストアに本を出す設定をすれば、数日後にはそれぞれのストアに並ぶようです。これで3つのストアから買えるようになるわけですが、買えるようになったからといって自動的に売れるわけではもちろんありません。宣伝して、本の存在を知ってもらうことが不可欠です。

と、ここから「秒速で1億円稼ぐ電子書籍の宣伝テクニック」とかを語れるといいのですが、本を出すのも初めてなうえに、まだ出して2週間とかです。おまけに、売上が日ごとに報告されるのはパブーで売れたものだけで、KindleストアやKoboストアでの売り上げ報告が上がってくるのは1〜2ヶ月先みたいです(パブーを使わずKindleストアに直接出してる場合はそうではないですが)。なので、コレをやったら効果があったよ!みたいなこともわかりません。

せめてもの参考に、僕がやったことを挙げておきます。

全然参考にならないですね・・・。どれぐらい宣伝すれば効果があるのか、どのくらいならウザくないのか、など考えてもよくわからないので、とりあえず「Koboで買えるようになったよ」とか変化があったタイミングで、Facebookとかには書いています。

電子書籍に対する周囲の認識など

この記事の最初に「ePubじゃなくPDFでほしい」という人たちの話を書きましたが、同時にいただくコメントが「電子書籍ってどうやって読むの?」です。電子書籍というものは知っているが、読んだことがないし、読むための具体的な方法も知らない、ということですね。

僕の友人のうちWeb制作関係者や、海外在住で紙の書籍が手に入れにくい日本語教師などは、立場上そうした知識があるとか、自力で調べられる人の割合は高いようです。でもまぁ数でいえば、上のような質問が返ってくることは普通と言っていいでしょう。

僕も自分で所持している端末はiPhoneと初代iPadしかありませんので、友人に端末の表示具合を見せてもらったりしました。電子書籍自体も紙の本ほどには気軽に読めていません。持ち歩くのに適したタブレット端末を買えば状況は変わりそうですが。

そんなこんななので、Amazonで買い物をしたことがある人はKindle版を勧めるのが簡単かなぁとか、PDF版もあることをアピールした方がいいなぁとか、パブーでブラウザからすぐ試し読みができるのは重要だなぁとか、そんなことを思いました。本の公式サイトを作って案内文を載せたのは、そういう状況もあってのことです。

ということで、作業メモ+雑感でした。何かのお役に立てれば。

最後に、買ってくださった人へ

この本を告知直後に買ってくださった方々もたくさんいて、本当に感謝しております。で、できればお暇なときにでも、読んでの感想を一言いただければ非常に嬉しいです(TwitterとかFacebookとか、あと「shokuto」のGmailアカウントにでも)。テーマはプレゼンなので一般的ではあるのですが、アプローチは類書とはかなり違うので、賛否両論いろいろあるかと思っています。何より反応があるこのが、いちばん嬉しいことですので、どうぞよろしくお願いします。