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できるとできないのあいだ

元旦は親戚が集まって鍋を囲むのが恒例行事で、今年は我が家がホスト。ということで、僕もささやかなもてなしに、豚の角煮を作って出しました。

僕は料理下手なので、格好のつきそうな料理はこれしか作れません。料理上手なんだねーなどと言われましたが、本当に下手です。包丁さばきは危なっかしいし手際も悪くて、もうちょっとまともに作れるようにならねば!と自分でも日々思うくらいです。いやマジで、そこ勘違いされると僕が困るから・・・。でも角煮は悪くない味に仕上げられます。なぜか。

その最大の要因は「レシピがよくできてること」です。ネットで角煮に関する記事を探していると「豚の醤油煮になってしまった」というレポートをよく目にします。角煮は作り方に結構バリエーションがあって、やわらかく煮るのは難しいと感じている人が多いようなのですが、僕が参考にしたレシピは優秀らしく、初回からそういう失敗をしませんでした。だから「作るのが難しい」というイメージがありません。幸運なことに。

さらに、角煮の料理手順が「スキルのない人でも実行しやすいタスクばかりで構成されていること」も大きいです。土鍋を使うのですが、豚バラを切って、フライパンで表面焼いて、土鍋に放りこんでお湯入れて煮て、調味料入れて煮詰める、という流れ。この流れに、特段技術が必要な部分がないんですよね。味をみて塩を入れるとか、卵料理のように火加減に気をつけて手早くやるとか、そういうファジーな基準や繊細な道具扱いを求められることがない。分量や調理時間は測れば間違いがないわけで、安心・確実に一定の結果を得られるんですよね。

もちろん、味見をしながら調味料をコントロールできるなら、そのほうがよりおいしく作れるでしょう。食材が足りない場合に代替品を見つけられるのであれば、さらに実用度も高まるでしょう。でもそれって「たいして料理ができない」僕にとってはハードルが高い。逆に言えば、そういうスキルを持っていることが「料理ができる」ってことなんだと思います。

不思議なのは、料理におけるそうしたファジーな基準や繊細な道具扱いに対して、できる人は「そんなもの適当でいいんだよ」って言いがちなんですよね。できない人はそこで困るんだってこと、もっとわかってくれてもいいのになーと思います。あれって結構嬉しくない言葉なんですよ。馬鹿にされてるみたいな感じでね。僕がコンピューターの操作を教えるときは、そういう「できる人は簡単にスルーする要素」にみんなツッコミ入れるじゃない。だから常に意識して教えてるのにね。

「できる」とか「できない」って、そんなに簡単に切り分けられないし、いったん「できる」側になると積み上げた経験を忘れてしまいがちなのかな。忘れてしまうのはもったいない。その人が「できる」に至るのに必要な要素って人それぞれだけど、少なくとも自分と似たようなところでつまずく人のサポートには必要でしょ。それって大事なことだと思うけどなぁ。

ちなみに、僕が「適当で片付けられない」と感じていたことを丁寧に解説している本が、渡邊香春子さんの「調理以前の料理の常識」という本です。続編もあります。これは本屋さんで「スゲーいい本じゃないの?!」と一目ぼれしたのですが、その後しばらくして人気の本となって目立つところに置かれるようになったので、見たことがある人も多いんじゃないでしょうか。類似本もたくさん出ましたが、やっぱりこれがいちばんオススメです。

あと、僕が豚の角煮を作るときのレシピは、福森道歩さんの「スゴイぞ!土鍋」という本に載っています。この本もオススメ。ほぼ日に詳しい紹介があるので、気になる方は本屋さんでチェックしてみてくださいね。