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コミュニケーションとツールの相性、そしてそれ以外

NAKAHARA-LAB.NET 東京大学 中原淳研究室 - 大人の学びを科学する: メールベースでの議論!? : 「言外の意味」を読み解く

上の記事によれば「メールベースでの議論」というのは「実際には実行しない」という言外の意味を持つ言葉なんじゃないか、ということで、個人的にはちょっと意外だった。

筆者の中原さんが「議論」と鍵括弧を使って書いているところから、これは自身の活動のコアになるようなコミュニケーションのことを指しているのだと思う。そういうのにはメールというツールは向いていないと。メールじゃないなら何を使うのか。直接話す、あるいは電話とかなのかな。

直接話せるのならそれが一番というのは僕も思うところだけど、実際はなかなか難しい。仕事相手と活動エリアが離れていたり、スケジュールが合わないことも多い。僕は電話が好きではないので、コミュニケーションのツールはメールが基本になっている。だから「メールベースの議論」という言葉は、特に言外の意味を考えず普通に受け取っちゃうかな。このへんは働き方によるところも大きいのだろう。

最近の世の中(特にIT系の業界)は「電話は悪、メールにすべし」から「メールは悪、チャットにすべし」みたいな流れになってきている。グループチャット系のサービスを仕事の必須ツールとして挙げる人も身近に多い。メールよりも短い文章で往復する回数も多いから、より直接話すのに近いコミュニケーションだというのもあるのかもしれない。

僕はチャットが何となく好きになれない。メール以上に簡潔な表現になっているぶん、文意というか、相手の言葉の選択の背景にある心の動きが読みにくいと感じることが多いから。チャットは反応良く言葉を次いでいくのが普通なので、あまり考えずに言葉をタイプしていくところもあるんだろうけど、どうも「え、そのリアクションってどういう意味?なんか機嫌でも損ねたのかな?」と感じてしまうことが多い。僕は相手にそう思わせるのが嫌なので、メールに近いとまでは言わないけど、ちょっと考えて長めにタイプしてから送る。結果テンポが悪くなって、相手もやりにくく感じてるのだとは思うけど・・・。

どんなツールを使うにしても、相手とうまくコミュニケーションを取るために必要な言葉の量って大して変わらない、と思う。チャットを使うことで言葉の総量が減るような場合、それはメールでもうまく想像力を働かせて工夫して書けば問題ないケースなんじゃないだろうか。逆に、直接会ってしっかり話をしないとうまくいかないような話は、チャットやメールでは疲れるぐらいにやりとりが必要になるケースだと思う。そして、上手な人はどのツールを使っても密度の濃いメッセージを送れるし、話がいつも脱線する、ダラダラ長い話をする人には、どのツールを使ってもイライラさせられる。ちょっと極端なまとめ方かもしれないけれど。

一般に言う「ツールがコミュニケーションの質に影響を与える」という点については大いに同意するし、自分もツールを作る立場で仕事をしているから、そうしたことを常日頃考えてデザインはしている。でもそのいっぽうで、うまくコミュニケーションを取るための表現力、それを生かす想像力とか観察眼とかを養うのも重要だよね、と思ったりする。

この話も、特にオチがあるわけではありません。