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変化の激しいものと変わらないもの

看護や介護分野での日本語教育支援を目的に制作された「日本語でケアナビ」の公開は2007年4月。ターゲットはフィリピン(のちにインドネシアも追加)からの外国人介護士なのですが、公開後に利用調査インタビューをしてみたところ、どうも十分に活用されていない様子。自宅にPCがなく、施設の共有PCはスタッフに毎回断りを入れないと使えないため気が重い、というのがその理由のひとつでした。そこで、施設スタッフ向けにパンフレットを配って職場でのPC活用を提案したり、ポケット辞書タイプの書籍版を作ったりしました。とにかく学習者にコンテンツを届けたいという思いからです。

ところが昨年あたりから状況は変わり、スマートフォンがどんどん広まってきました。日本語学習者の所持率もどんどん上がってきている印象。こうなってくると、サイトもスマートフォンに対応しておく必要がある。いや、対応でなく、スマートフォンがメイン端末ぐらいの意識にならないとまずいんじゃないか。「日本語でケアナビ」も、当初予定していた「一部機能の対応」から「機能も使い勝手も快適なよう新しく設計しなおす」ことが目標になりました。そうして先日公開したのが「スマートフォン版 日本語でケアナビ」なわけです。いろいろ事情があって、先に公開しているPC版とはURLが違うのですが、小さいディスプレイに合わせて全面的に作り直しているので、ずいぶん使い勝手が向上していると思います。これで少しでも現場での利用が進むといいのですが。ちなみにシステムは a-blog cms を使っています。

こうした状況の変化の中で僕がいちばん気にしているのは、クライアント、例えば日本語教師や教育関係者をこの流れにどう乗せるか、ということです。どんな説明をしたり、どんな例を見せていけば、これまでの「PCの置かれた机に向かって勉強するイメージ」から「日常の様々な場面で自由に活用するイメージ」を描いてもらえるようになるか。そういったパラダイムのシフトがないと、業界の進歩もなく、元気もなくなっていくと思うのですよね。もちろん、僕の仕事も減って元気がなくなっていくのです(笑)

よく「Webは変化のスピードが速いから大変だ」と一般に言われます。それは確かにそうですが、そういうことは前から分かっていることだし、新しい技術は可能性を広げるワクワク感も伴うものです。新しいものをどのくらいキャッチアップしていくかは、自分が舵を取って決めていけばいい。その部分はまだ割り切りやすいと思います。

むしろ逆に「なかなか変わらないものとどう向き合っていくか」が大変な要素なんじゃないでしょうか。変えたいけど変わらないものって、簡単な解法がないどころか、自分の力だけではどうにもならないことが多いです。上で説明したクライアントの意識とかがそう。ただ、変えにくいものだからこそ、変わったときは劇的に視界が開けるものでもあるので、諦めずにチャレンジし続けたいと思いますね。

何をするにも苦労やプレッシャーはつきもの。でも、変化の激しい技術をとにかく順に追っていきたいのか、簡単には変わらないものを変えるために技術を品定めするのか、そこをはっきりさせれば少しは楽になるんじゃないでしょうかね。